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中国の戦略総括から新潟の中国領事館問題まで

1. 『雲南日報』の特集「雲南省の対外開放における十のスポットライト」

  約三年間余、このブログでは、長らく中国の東南アジア方向への進出について観察を続けてきた。即ち、中国西南部に於ける地域開発や交通開発、そしてそれらによる隣接地域への影響である。

  その動向観察の中で一つの軸としているのは、日本では存在自体が殆ど知られていない社会開発戦略「『橋頭堡』戦略」である。
  中国雲南省の経済建設、それに関連するほぼ全ての計画・整備が、この戦略に基づいて構築されている。

  やや遅れながらも、今回は「『橋頭堡』戦略」の2011年の中国側の総括を読み解いていきたい。

  2012年1月4日、雲南省の新聞報道や対外宣伝の役割を果たす『雲南日報』の7面「東盟南亚报道」(=アセアン・南アジア報道)欄に、「2011:雲南対外開放十大亮点」という名の特集が組まれ、読んで字のごとく「雲南省の対外開放における十のスポットライト」として、総括的な記事が書かれている

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  ▲2012年1月4日『云南日报』(クリックで大きくなります)

  プロデューサーとして劉紅という人物、コーディネーターとして樊麗川という人物、ライターとしては先の樊麗川に加えて楊紅川、陳保江、儲東華という人物らにより記事が作成されている。いずれも、雲南日報では名を幾度も目にする記者たちである。



2. 国家戦略である「『橋頭堡』戦略」

2.1. 中央政府からの介入

  注目に値すべきは、これまで明らかに国家戦略であると考えられつつも確信を持てずにいた「『橋頭堡』戦略」が、「桥头堡建设正式上升为国家战略」(=橋頭堡の建設は正式に国家戦略として戦略地位のランクを上げた)と明記されていることである。

  改めて明記すれば、この戦略は2009年7月に胡錦涛国家主席が雲南視察時に「雲南を我が国の西へ南の開放的な重要たる橋頭堡とならしめる」と言ったことから始まるものであり、この戦略に於いて地方政府は、中央から対外開放へ向け重視されたという事実を逆に利用して投資資本を呼び込み、最も辺境の省から最も先進的な省へと向けた環境整備を狙っている。

  この開発戦略の国家戦略化には、中国の国家発展改革委員会(発改委)がかかわっており、「指導意見」、即ち中央政府からの介入も含め進行させていくということから、国家戦略としての地位にランクを上げられたものと考えられる。

  以上のような動きを受けて、「中国面向西南開放重要橋頭堡建設雲南研究中心」(=中国の西南への対外開放における重要な橋頭堡建設の研究センター)というシンクタンクが、2011年11月8日に雲南大学で正式に創立されている。
  創立に当たっては。中国共産党の雲南省委員会で宣伝部部長をつとめる張田欣が、 雲南の「『橋頭堡』戦略」発展の理論的サポートと、政策決定の諮問機関としての役割を果たすことが期待されていることを表明している。

2.2. 地方戦略と国家戦略、そして地域主権

  余談ながら、最近では、新潟における中国領事館問題含め、日本海側の北東アジアとの連携が話題となっている。ここに地方分権を望んでまで、アジアと手を組まないと生き残れないと考える地方の現状がある。
  この新潟の動きを責めることが、他地域に出来ようか。
  これこそがグローバル化によるボーダーレスの促進の表面化であり、そこに国益との矛盾関係が生まれるという示唆であろう。

  根底に流れる潮流としての動きは、中国も同じであるともいえる。しかしながら中国は中央集権的な国家体制ゆえ、その動きにも中央が介入し、結果的に地方の「地域力」のアップと国力の増強とを、同時に並行させて成し遂げるべく動くことができるという現実がある。

  良くも悪くも民主主義国家で有る日本において、地域主権という単語が持つ落とし穴がここにある。根底にあるのはボーダーレス化と国益の二つの矛盾関係である。



3. 2011年の「『橋頭堡』戦略」に対する中国側の総括から

  話を戻す。

  冒頭に挙げた雲南日報の特集では、以下の10点が強調・確認されている。

  1.建設橋頭堡 構建對外開放新格局
  (=橋頭堡を建設して対外開放の新しい構造を作り上げる)

  2.試驗區合作區啓動 加快沿邊開放步伐
  (=試験区や合作区の始動で、国境の開放の足並みを加速させる)

  3.部省攜手合作 多措併舉促進對外開放
  (=部や省は互いに協力して、ともに対外開放を促進する)

  4.轉方式調結構 對外貿易再創新高
  (=方法を転じて構造を調節し、対外貿易でさらに新しく高い段階へと為す)

  5.滇企出國 “走出去”創出新天地
  (=滇[雲南]の企業は海外に進出し、外に出ていくこと[走出去]で新天地を創出する)

  6.大項目推進 招商引資取得新突破
  (=大プロジェクトで企業の誘致や資金導入を推進する)

  7.强“点”连“线” 立体化大通道更通畅
  (=強い「点」を「線」として連ねるように、交通ネットワークの立体化を更にスムーズに進める)

  8.請進來達互通 人文交流合作取得新進展
  (=人的交流を促進し、協力によって新たな進展を得る)

  9.七彩雲南旅遊 開放步子邁得更快更實
  (=雲南の旅行・観光など、交通ネットワークを開放的にしていく)

  10.四國聯合執法 湄公河黃金水道復航
  (=四カ国が共同で法を執行し、再びメコン川の黄金水道を航行できるようにする)


  この記事で編者らは以下のように総括している。

  2011 年、我が国の南西の重要な国境ゲートを開放し、西部地区に向かって外に出ていく[走出去]戦略の先行区域の設定を実施し、沢山の積み重ねによって徐々に雲南は “後来居上”(後ろの者が先の者を追い越す。転じて「内陸の雲南が沿岸部の豊かな地域を追い越す)か?)をなしとげる。


  この総括には、明らかに経済的に取り残された地方が状況を打開しようとする執念が見て取れる。

  先頃の2012年3月5日から北京の人民大会堂で開かれた第11回全国人民代表大会第5次会議に当たっては、胡錦濤国家主席も秦光栄、李紀恒ら雲南省の実力者らを含む雲南代表団とともに、活発に討論や意見交換を行っている。

  

  地方の状況打開の動きにも中央が介入し、結果的に地方の「地域力」のアップと国力の増強とを、同時に並行させて成し遂げるべく動いているという現実を何より象徴している。

  新潟の中国領事館問題を考える際に、地方としての生き残りをかけた取り組みと、国益の保護という、二つの矛盾関係から捉えてみなければ、解を導くのは難しいのかもしれない。

  そしてそこにあるのは、グローバル化の中で国境が希薄化してきたことも無視できないという事実である。

  中国と日本は国家体制が異なる。もとより中華思想により国境という概念が薄いといわれる中国だが、グローバル化しつつ国力増強へとつなげていくやり方は見事というしかない。



  

【参考】

※1  雑誌掲載のお知らせ
    (2011年3月22日 本ブログ過去記事)
※2  2011:云南对外开放十大亮点
    (2012年1月4日『云南日报』)
※3  为桥头堡建设提供理论支持和决策咨询
    (2011年11月9日『云南日报』)




















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テーマ:国際政治 - ジャンル:政治・経済

  1. 2012/04/10(火) 18:51:45|
  2. 獨評立論-中国
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