BLOG「獨評立論」

BLOG「獨評立論」です。ブログ名は「獨り評し論を立てる」の意。主にアジアを中心にニュースや体験などから「獨評立論」を行います。

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
  1. --/--/--(--) --:--:--|
  2. スポンサー広告

「謀略鉄路」(3)

(続き)



  先に筆者は「陸路の交通網を整備して浸透を深め影響力を確保・拡大していくのは、ウイグル・チベット以降も連綿と続く中国の基本的な戦略」と述べた。南方への中国の進出について述べる前に、この基本的な戦略が現在発展的に拡大されていることを踏まえておきたいと思う。

  その中でも特に、陸続きの国家のみならず世界各地の発展途上国への外交戦略として押さえておきたいのが、以下の3つの戦略キーワードである。

1.「真珠の首飾り」戦略
2.「新幹線外交」戦略
3.「橋頭堡」戦略



1.「真珠の首飾り」戦略とはなにか

  これは、南アフリカ~アフリカ東部などモーリシャスやセイシェルを経由しながら、インド洋を横断してスリランカ南部のハンバントッタ港に至り、そこからバングラデシュ~ミャンマーを経てマラッカ海峡を通過し海南島に至る経路、もしくはミャンマーのアラカン港から昆明を経て広東・上海・北京に至る経路に拠点を築き港を手に入れて行くという戦略である。拠点を各地の要所に点在させ、それを数珠繋ぎに連結していき外交的なラインを作成するということから、真珠の玉を糸で繋いで形にするネックレスに例えて「真珠の首飾り」と呼ばれる。
  この戦略については2009年1月8日のJBpress(日本ビジネスプレス)「北京が欲しがる『真珠の首飾り』と『龍のトンボ』[A String of Pearls; Dragon’s Dragonfly]として詳細に報じており、産経新聞でも2010年4月から「【巨竜むさぼる 中国式「資源」獲得術】第3部 真珠の首飾り(1)」として特集が組まれ広く知られるようになった。
  最近では2010年5月17日のBBC(英国放送協会:The British Broadcasting Corporation)「チッタゴンは中国の『真珠の首飾り』戦略の一環か」[Is Chittagong one of China's 'string of pearls'? ]と題した記事を掲載し、これを中国の『環球時報』および『中國經濟網』が同月21日付で追って報じている(環球時報「英媒稱中國“珍珠鏈”戰略將逐步成形 是遏製印度舉措」・中國經濟網「BBC:中國巨資援建吉大港 印度關註」)。
  なお、余談であるがチッタゴンは漢字では「吉大港」と表記する。チッタゴンは字の如く中国に「大いなる吉をもたらす港」であるかもしれない。そしてそうするべく中国は現在外交攻勢を行っていると言えよう。

2.「新幹線外交」戦略とはなにか

  これは、中国語では「高鉄(新幹線)外交」と言い、その名の通り「新幹線を建設することで進める外交」である。より噛み砕いて言うならば、新幹線を中心とした高速鉄道の建設に援助や技術支援・借款などでコミットし、その分野から経済的に影響力を拡大させていくという戦略である。この言葉は、実際に中国が新幹線(高速鉄道)の建設に誘致した諸国との外交関係や、或いは中国が鉄道建設などを支援する発展途上国に対し影響力を拡大していることから、新幹線を外交の道具にしているということでそのまま「新幹線外交」と呼ばれるようになっている。
  中国の鉄道問題専門家として知られる北京交通大学の王夢恕教授も同様の見解を示しているようで、産経新聞が報じた「中国 「新幹線外交」狙いは資源 中央・東南アジア17カ国に触手」によると、彼は中国メディアに対し、中国政府が展開する新幹線外交の意義について、「中国は発展維持のための資源を手に入れ、外国は中国と貿易ができる」と双方にメリットがあることを強調したという。
  しかし、筆者はこの「新幹線外交」の定義に少々異なる見方をしている。筆者は、この「新幹線外交」とは単純に「新幹線」「高速鉄道」という括りでの外交戦略ではなく、ましてや「交通」というカテゴリの外交戦略でもないものとみている。それは、筆者もほぼ毎号目を通す中国人留学生向けの雑誌『神州學人』2008年9月号(「神州學人 CHINA SCHOLORS ABROAD 2008年第9期總第223期])に、「中國‐東盟教育交流周:中國與教育交流新幹綫」と題された特集が載っていたことから推察できる。この記事はタイトルの通り、中国と東南アジア諸国連合(ASEAN。漢語で「東盟」)の教育交流を紹介し、ASEANの教育分野にも広がる中国の影響力や、中国語講座の開設の展開、相互留学の数の拡大やその後のビジョンなどを書いたものである。当然ながら「交通」はおろか、「新幹線」など文章には出てこない。ここで使われている「新幹線」とは、漢字の如く「新しい幹線」、即ち新しく大きなパイプを広げていくという、言うなれば或る種の系統学的な用法であろう。事実、新幹線という単語は日本語の「新幹線」と同じ意味で借用された新語だったが、使用されるうちにその「速さ」という意味が強調され、“音楽新幹線”(音楽最新情報)、“時事新幹線”(時事最速情報)という比喩的な用法まで生まれるようになった。
  これを踏まえて「新幹線外交」というものを考えた場合、単にこれを「新幹線や交通を外交の道具にしている」という単純な捉え方ではなく、即時の効果を生むことが期待できる新たなパイプを多方面に伸ばし、自国の影響力を展開・浸透・拡大させていくための外交戦略と捉えた方が納得できよう。
  もちろん交通インフラの整備や高速鉄道の建設とそれに対する援助もその内の一つであり、それ以外にも上に述べたような教育分野へのアプローチと相互交流、これらを含めての多角的な外交をまとめて「新幹線外交」と呼ぶことが出来る。

3.「橋頭堡」戦略とはなにか

  これは、周辺国への経済的進出などをそのまま地政学的な拡大に例え、そのうえでその拠点としての地域を「橋頭堡」すなわち「砦(とりで)」になぞらえた言葉であると筆者は解釈している。橋頭堡の本来の意味は、「橋を守るために、橋の両岸に築く陣地」「渡河作戦・上陸作戦などで、攻撃の拠点として敵地に築く陣地」であり、より軍事的な意味合いでは「トーチカ」、ビジネス的な意味合いに於いては「海外進出のための拠点」という使い方をする。



  以上に述べたキーワードの中で、とくに3番目の「橋頭堡」戦略、これが雲南・広西を中心としたASEAN隣接地域の政経関連報道のなかで頻出している。そして、それと連動するかのように東南アジアへ向けての積極的な経済建設アプローチが進行しているのである。

  「新幹線外交」の文字が『神州學人』2008年9月号に載った直後より筆者も関心を抱く中で、明らかに表面化してきた「真珠の首飾り」戦略。これと符合するように現在「橋頭堡」戦略は、「貧しい西南を発展させる」という中国西南部の経済建設ビジョンを打ち立て、西南における経済界の人間・人民政府を巻き込み恐るべきスピードで開始されている。



(続く)
スポンサーサイト
  1. 2010/06/02(水) 17:16:49|
  2. シリーズ記事「謀略鐵路」
  3. | トラックバック:0
  4. | コメント:0
<<「謀略鉄路」(4) | ホーム | 「謀略鉄路」(2)>>

コメント

コメントの投稿


管理者にだけ表示を許可する

トラックバック

トラックバック URL
http://dupinglilun.blog134.fc2.com/tb.php/6-da784252
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

時計


BLOG「獨評立論」

BLOG「獨評立論」です。ブログ名は「獨り評し論を立てる」の意。筆不精ですが、主にアジアを中心にニュースや体験などから「獨評立論」を行います。

Author:DUPINGLILUN
一人の日本人です。一切の企業、団体、宗教等とは無関係です。/ngóa sī Ji̍p-pún-lâng kì-chiá./yat boon yan/JAPANESE

ブログランキング

ブログランキングに参加しております。良い記事であると御評価下さる方は、ぜひバナーのクリックを御願いします。

人気ブログランキングへ にほんブログ村 政治ブログ 国際政治・外交へ
ブログ王へ

最新記事

月別アーカイブ

カテゴリ

獨評立論-未分類 (0)
獨評立論-中国 (23)
獨評立論-日本 (0)
獨評立論-朝鮮半島 (3)
獨評立論-東南アジア (7)
獨評立論-媒体 (2)
獨評立論-その他 (1)
シリーズ記事「謀略鐵路」 (10)
シリーズ記事「減速する中国の外交力と周辺地域動向」(未完) (16)
獨評立論-詩詞 (2)

過去記事全リスト

検索フォーム

最新コメント

リンク

このブログをリンクに追加する

RSSリンクの表示

書棚

メールフォーム

名前:
メール:
件名:
本文:

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。