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減速する中国の外交力と周辺地域動向(7)

(続き)

4.2. 宗主国としての紅衛兵的宇宙観

  述べたように、習近平は紅衛兵世代でもある。この世代は反ソビエト修正主義の時代背景もあって民族の自立、とくに中華民族としての自立を志向する性質も強い。それはスローガンとして「中國夢」(=中国の夢)というワードを掲げていることに端的に表れていると言えよう〔58〕。であるがゆえに中華秩序において自民族より「格下」とみなす中国周辺国については、その跳ね上がりを許さない傾向にある。況や太子党として育った習近平に於てをやである。そのメンタリティについては、すでに毛沢東が中国建国前の1936年に、端的に表現している〔59〕。曰く、

  日本佔領了朝鮮、臺灣、琉球、澎湖群島與旅順,英國佔領了緬甸、不丹、尼泊爾與香港,法國佔領了安南,而彈丸小國如葡萄牙也佔領了我們的澳門。


  日本は朝鮮・台湾・琉球・澎湖諸島・旅順、イギリスはビルマ・ブータン・ネパール・香港、フランスは安南(ベトナム)、さらにポルトガルの如き小国までもが我らの澳門を奪った。

というもので、これこそが中華思想的な領土認識であり、現在の中国と周辺国の軋轢の根本である失地恢復の狂乱的ナショナリズムに直結しているのである。「中國夢」の関連で言えば、「中華民族の偉大な復興の実現が、近代以降の中華民族の最も偉大な夢」と位置付けられている〔58〕
  しかしここに来て、北朝鮮は中国からの離脱を図り、張成沢を粛清して詳細を全世界に公表し、金正恩はこれを「民族の自立」に向けたものと位置付けている。これを中国が快く思うはずがない。さらに言えば喉下でミサイル実験などを行い東アジアに不安定をもたらしつつ、宗主国を差し置いてアメリカとの交渉などを行う北朝鮮の「主体(チュチェ)」そのものが、中華秩序的宇宙観に於て、構造的に容認できる存在ではないのである。その中華秩序的宇宙観を濃厚に有する紅衛兵世代による習政権には、なおその傾向が強いであろう。

4.3. 有事の可能性:北朝鮮への介入

  もし真っ先に中国が反応し介入を行うとすれば、それは北朝鮮周辺地域であろう。中央アジア、ロシア極東、東南アジアと多岐にわたるが、それらは国際社会から認知されているまっとうな独立国家であり、政治上の境界線:国境はそう簡単に変化することはないであろう(領土紛争は別であるが)。
  通常であれば国際社会は、国家が国家に介入するという事態を座視しない。中国が経済的浸透を進め影響力の拡大を図っている地域は、それは2014年に世界的なニューストピックスとして報道され続けたクリミア危機が象徴しており、クリミア半島の帰属を巡ってロシアとウクライナの間に生じた政治危機には各国政府の介入や国際社会の関心が集まった。これは朝鮮半島地域も同様であり、特に隣国である中国は、朝鮮戦争の際、「不能置之不理」(座視するわけにはいかない)という態度をとった〔60〕
  しかし中国が北朝鮮に対し緩やかに経済的接収を行なうべくアプローチを続けてきたことについて、これを歓迎しない国はないであろうことも背景として押さえておきたい〔61〕。北朝鮮が特異な鎖国的とも言える軍事国家であって良いとはどの国も思わない。かといって、どの国家もそこに眠る資源などには関心を示しつつ、政治的に積極的なアプローチは行いたくないというのが本音であるのだから。
  また北朝鮮については、東アジアにおけるパワー・ポリティクスの変容においてミャンマーとは比べ物にならない異質にして重要な要素を、明らかに有している。それは核兵器の存在である。ゆえに朝鮮半島の動向は他の周辺国と比して国家政策として上位に来るのは必然である。
  国際社会における大国、なかでも核クラブ(nuclear club)と呼ばれる核兵器保有国は、自国の優位性確保のために核兵器の拡散を何よりも恐れている。東アジアに関与する国家について言えば、米中両国であろう。しかし米国は中東問題やクリミア問題にくぎ付けになっており、北朝鮮にまでパワー・ポリティクスにおけるリソースを割く余裕はないと言える。この場合、核クラブの中で北朝鮮への抑えとして行動できる国家は中国しか存在しない。
  もし今後、北朝鮮国内の不安定が表面化し、国際的な危機感が高まった場合には、中国が北朝鮮に介入する可能性は非常に高いと言えることを押さえておきたい。そして「広義の中国エージェント」とも言えた張成沢の粛清によって、その素地は整いつつある。その参考となるのが、ベトナムとの間で発生した中越戦争と、インドネシアで発生した9・30事件であろう。

(続く)




※58 習近平講和「欧米同学会設立百周年記念大会におけるスピーチ」
  (2013年10月21日、欧米同学会設立百周年記念大会で)
※59…

毛澤東選集。しかし余りにも露骨な領土観ゆえに、毛沢東の発言をまとめた毛沢東選集においても、各年代ごとに表現が異なる。中国に限らず独裁国家では、その時の政治状況や権力構造に合わせ歴史が書き換えられることは珍しくない。今回の例で言えば、「佔領了」という表現を「“租借”了」とあらわしたものも有れば、英国が占領したと非難する地域からビルマ・ブータン・ネパールを削除したり、フランスが占領した地域を安南(ベトナム)ではなく中国南部の広州湾としたり、ポルトガルについて言及していない資料も見られる。ただこの時期、毛がこの種の発言ないし講話を残したのは間違いない。故・中嶋嶺雄東京外国語大学名誉教授・国際教養大学学長は、「あまりにも露骨な領土観ゆえに現在は削除」としている(「隣国 中国との共生を考える」,外交専門誌「外交」Vol.4,外務省,2010年

※60 朱建栄,『毛沢東の朝鮮戦争―中国が鴨緑江を渡るまで』,岩波現代文庫,2004年
※61 金正恩への祝電に見る「中国の本音」
   (2012年1月4日、当BLOG過去記事)












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