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減速する中国の外交力と周辺地域動向(6)

(続き)

3. 中国の外交力の減速――背景としての習政権の世界観

  これら一連の動きに象徴されるように、中国は習政権に移行後、明らかに外交力を減速させている。先ごろ発売された雑誌『ニューズウィーク』(日本語版)の12月23日号では「特集:首脳の成績表」として各国の指導者たちの資質と実績が分析されており〔49〕、習近平については「汚職狩りでは剛腕も外交は場当たり的?」とタイトルが付けられている。戦略的な計画を着々と実行しているというよりも、成功も失敗も含めて「場当たり的」であるという評価が下されたと言える。事実、対日政策をはじめとするアジアでの外交政策では、ソフトな外交方針を対外的に示しつつハードな対外行動を取るなど〔50〕、行動原理の不明確な矛盾に満ちた現象の顕在化が見られる。
  習は「大衆路線教育実践活動」を行うなど、群衆路線に軸足を置いた政治的スタンスをとっている。この活動は、習近平らをはじめとする現在の中国共産党指導部が党中央委員に選出された中国共産党第十八次全国代表大会(2012年11月、中共十八大)で打ち出したもので、現在の党指導部が重視しているものである〔51〕
  これにより彼はリベラルな民主的行為を実行すると捉えられがちではあるが、一方で紅衛兵経験という経歴や中国共産党の歩みから考えた場合、中国共産党のリーダーであり中国建国の父である毛沢東の思想である、「毛澤東思想」の忠実な実行者であると捉えることもできる。毛澤東思想の核心は、①實事求是(事実の実証に基づき真理を追求すること)、②群衆路線(群衆発で群衆の中へ入っていく指導工作のこと)、③独立自主・自力更生(革命の建設を自力で遂行すること)――である〔52〕〔53〕。①については結果が待たれるものの、②と③については習近平については明らかに適合するのであり、そうなれば彼の立ち位置は保守派と捉えることができる。改革派と見られていた温家宝との確執めいた噂については、過去に拙BLOG記事でも取り上げたことがある〔54〕
  いずれにせよ、現在の習政権の方向性の矛盾や迷走については、中国の政権交代後や権力闘争の最中に見られる、穏健派と強硬派もしくは改革派と保守派の、板挟みの結果だと考えられる論考が多かった。しかし、これらの政策の矛盾は、習政権首脳部が「自分の世界観を完全には詰め切れていない」ためではないかという分析が出てきている〔55〕



4. 習政権はどうするのか――紅衛兵時代の歴史との符号

  では果たして、習政権は今後、外交面でどうした対応を取っていくのか。習政権の指導層は、1950年前後に生まれ、1960年代の文革期に青年期を過ごし、人格の形成された人間が多い。そしてその後、文革末期から改革開放初期の中国を見て政治経験を積んでいくことになる。習自身、文革期に紅衛兵を経験し、さらに太子党であり、なおかつ廈門副市長や福州市党委書記など中国の資本主義化の恩恵を受ける地域で経験を積み、中央に引き上げられてかじ取りを任され昇り詰めたという経歴を持つ〔56〕。これが彼の政策に影響を落としていることは、想像に難くない。
  習個人の政治的メンタリティと世界観が形成されたのが、中国の文革末期から改革開放初期であるとするならば、同時期の中国の動向は、今後の習政権の方向性を占う上で大いに参考になろう。ましてこの時期は、世界は冷戦構造が崩壊に向かう中でもある。現在アメリカの国際的影響力の低下を考えれば、不安定さを増していく国際情勢の中で中国が何を行っていくかを分析するに当たり、当時の中国の動向を振り返ることは無駄ではないと考える。昨今の情勢と照らし合わせながら比較を行ってみたい。

4.1. 北朝鮮との不和、ミャンマーの春

  まず指摘しておきたいのは、最近明らかに表面化している北朝鮮との不和である。これについては、先の記事で述べたものの、文革期との比較という切り口で論じるならば、その根底にあるのは何であろうか。
  先軍政治を掲げ、国防委員長(金正日)から国防委員会第一委員長(金正恩)へと権力が移譲され今なお最高権力を有する北朝鮮の現体制は、中国人にとっては文革期を想起させると言われている。長老を除外した人民解放軍中心の政治路線は、まさに文化大革命前半に実行された林彪路線と相似するというのだ(さしずめ北朝鮮版の文革といわれる三大革命赤旗獲得運動は「四人組路線」か?)。
  このことを端的に表しているのが、中国における以下のようなジョークであろう〔57〕

  日本是中国的唐宋博物舘,
   日本は中国の唐や宋の博物館、
  台湾是大陸的民國博物舘,
   台湾は大陸の中華民国時代の博物館、
  北朝是中國的文革博物舘,
   北朝鮮は中国の文革博物館、
  香港澳門是中國的殖民地博物舘。
   香港・マカオは中国の植民地時代の博物館。
  中国是馬恩列斯毛鄧博物舘。
   中国はマルクス、エンゲルス、スターリン、毛沢東、鄧小平の博物館。

  これは一つのジョークではあるが、中国人にとって北朝鮮は、嫌悪とノスタルジーの対象であるとされる。なお林彪は、文化大革命の後半に林彪事件によって「毛主席の親密な戦友」から「反革命集団の頭目」として歴史の闇へと葬られることになる。そして当時を知る中国人はこの事実を覚えており、習近平は当時青年期であった。
  さらに言えば、習近平は林彪が権力の絶頂にいた1969年に、父・習仲勲が批判されたことで反動的な学生と見做され、約7年間、延安に下放されている。
  またミャンマーに関して言えば、同国は軍事政権から民主化という流れを辿った。これはまさしく、文革後その反動から中国の民主化運動「北京の春」が発生したことと似た経過を辿っている。当時、習は清華大学化学工程部に在籍しており、明らかにその民主化運動に接しているはずである。しかし彼は父・習仲勲の復権もあって、中国共産党幹部の秘書や地方官僚の経歴を歩む。
  これはきわめて興味深い示唆ではあるまいか。明らかに習は、昨今の両国の動きに対して愉快な感情を抱いてはいまい。

(続く)




※49 特集:首脳の成績表
   (CCCメディアハウス『ニューズウィーク(日本語版)』2014年12月23日号)
※50 習近平政権の外交・内政の課題と今後の日中関係
   (2014年7月31日『経団連タイムス』)
※51 毛沢東的な独裁体制構築の総仕上げ「4中全会」に向けて気合十分の習近平主席
   (2014年10月13日『現代タイムズ』)
※52 『“九大”文件名詞解釈』,香港朝陽出版社,1969年
※53 關於建國以來黨的若干歷史問題的決議
   (中國共產黨第十一屆中央委員會第六次全體會議一致通過)
※54 中国情報に権力闘争の匂い
   (2011年5月6日、当BLOG過去記事)
※55 Xi of Two Minds: Be a Good Neighbor, or Assert China’s Power ?
   (2014年6月12日『Sinosphere』)
※56 茅沢勤,『習近平の正体』,2010年4月5日
※57 文革博物館・文革大辞典・文革学
   (2010年8月6日、当BLOG過去記事)












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  1. 2014/12/17(水) 19:50:49|
  2. シリーズ記事「減速する中国の外交力と周辺地域動向」(未完)
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