BLOG「獨評立論」

BLOG「獨評立論」です。ブログ名は「獨り評し論を立てる」の意。主にアジアを中心にニュースや体験などから「獨評立論」を行います。

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
  1. --/--/--(--) --:--:--|
  2. スポンサー広告

減速する中国の外交力と周辺地域動向(4)

(続き)

2.2 各利益分野の経過

  以上のように、2010年6月3日以来「核心的利益」と明確に位置付けられたミャンマーにおける中国の影響力および具体的な権益は、①エネルギー資源確保、②インド洋へのアクセスという側面、③安全保障――の3点からその位置付けを確実なものとしてきた。これら3点は、2点目のインド洋に対する速達性という地理的な要素がその背景として大きい。ミャンマーの軍事政権が国際社会の中で孤立していたなか、ミャンマーにとっても協力関係の構築を惜しまない大国・中国は、重要な外交相手としてその存在感を増していた〔31〕。まさに北朝鮮が同時期に、国際社会から孤立を深める中で中国依存を強めていたのと同様である(中朝両国の間では、金正日が死亡した2011年12月末の段階で大韓貿易投資振興公社〔KOTRA〕により、両国の貿易額が前年比約7割増となる過去最高の記録が集計されていた)〔32〕
  しかしその後、ミャンマーにおけるこれら中国の権益は、その確固たる存在感を低下させるばかりかプロジェクトの進捗における減速や停滞、そして立ち消えという事態に遭遇していく。

2.2.1 ミッソンダム計画の停止

  エネルギー資源確保の分野で目玉となるプロジェクト、イラワジ川のミッソンダム。この計画は、ミャンマー政府と中国国営の中国電力投資公司(CPIC)などが共同で建設を進めていたものの、ビルマのテイン・セイン大統領が2011年9月30日に「任期中すなわち2015年まではミッソンダムの建設を中断する」という提案を議会に提出〔33〕。総事業費が36億ドルに達し、完工後は中国の雲南省に21ギガワットの電力が供給される見込みであったため、同計画の中止は中国に決定的な衝撃を与えたとされる〔34〕
  事実、中国は同年10月4日付の人民日報において、その事実に対する驚きを率直に吐露するとともに、ミッソンダムの水力発電プロジェクトは両国にとって相互利益をもたらし「歴史的評価に耐えうるものである」〔35〕と、建設メリットを強調する記事を掲載している。

  2011年10月4日『人民日報』03面
  ▲2014年10月4日『人民日報』(クリックで大きくなります)

2.2.2 ミャンマー行き鉄道の建設中止

  インド洋へのアクセス整備を代表する計画であったはずの「雲南国際鉄道・西線」計画。昆明―大理―瑞麗―皎漂の約810キロのルートで皎漂(=チャウピュー)を目指す計画であった。今年5月25日にも、中国工学院院士で著名な鉄道専門家である王夢恕が南方日報に「昆明からミャンマー行の鉄道は6月に着工」と述べるほどで(この事実は即座に雲南省の『昆明日報』で報じられた)、その進度は、雲南省の社会科学院東南アジア研究所の助理研究員・趙殊嵐の言を借りれば、「ユーラシア、中央アジア、東南アジア方向を目指す中国の3つの鉄道戦略の中で、東南アジア方向は最も機が熟した」と言わしめるほどであった〔36〕。計画は順調に進行しているかに思われた。

  2014年5月25日『昆明日報』03面
  ▲2014年5月25日『昆明日報』(クリックで大きくなります)

  しかしミャンマー鉄道省は7月20日に、計画の白紙化をヤンゴンで発表した〔37〕。理由としては、同計画が市民団体と国内世論の反対を生んだこと、反対運動により建設を担う中国の鉄道建設企業である中国中鉄が建設工事に取り掛かれなかったことを挙げている。以上2つの理由から、訪日経験も持つ鉄道省のMyint Wai鉄道局長が、中国の鉄道計画についての未更新を理由に合意は終了と発言。建設を担う予定だった中国中鉄も、中国政府の応答は特になかったとしたうえで、ミャンマー世論を尊重するだろうと消極的な態度を環球時報に明らかにしている。
  このミャンマーの措置は、中国が東南アジアで長期的に進めていた鉄道ネットワークの構築に誤算を生じさせた。興味深いのは、合意下では本来、中国は建設に約200億USドルを割り持つ代わりに50年間にわたって鉄道の管理権を持つ予定だった点である〔37〕。中国の駐ミャンマー大使の楊厚蘭は、「雲南からアラカン海岸への鉄道計画の取り消し」(※チャウピューはアラカン海岸に位置する)について否定する発言を行っており、新華社でも「ビルマの経済官僚の匿名発言」という形をとり、あくまで「調整時間が必要だ」と完全な頓挫ではないと強調した報道を行っている〔38〕

2.2.3 なぜプロジェクトは減速したのか

  これら各プロジェクトの減速・停滞で注目されるのは、いずれも世論を背景としていることである。各プロジェクトのなかで起きた環境問題や住民の移住政策などが、現地住民の反対世論を喚起した。また歴史を紐解けば、東南アジア諸国の民族は、いずれも北方遊牧民族の襲来で南化した漢民族に押し出されるように、長江流域から南下してきた民族の集合国家が多い。タイでは教育の場で「ビルマの脅威」(主にアユタヤ王朝の消滅を指す)が叩き込まれるように、ミャンマーの主要民族であるビルマ族は、自民族最初の王朝であるパガンが中国の手により陥落し歴史から消滅したことを知っている(正確には、パガンはモンゴル族により陥落した。モンゴル軍は大元ウルスへの朝貢を約束させ撤退するが、最終的にパガン王朝は下ビルマでのモン族の再興もあり消滅への道を歩む)〔39〕。この歴史的経緯は現在もビルマ全域に、中国の脅威というものを肌感覚で持たせるに十分であろう。
  こういった現地の反対世論は、本来ならば中国にとって何の障害にもならないはずのものであり、それはミャンマー当局にとっても同じはずであった。しかし世論の沸騰は、反対世論がミャンマー当局の側にとって無視できなくなるところまで達していた。背景には、ミャンマーが進める民主化・自由化があった。

(続く)




※31 雲南省拠点の中国の西南方進出と中国の覇権戦略
   (2011年3月号『時局』、拙文)
※32 中, 올해 대북 교역액 사상 최대
   (2011年12月29日『연합뉴스』)
※33 政府がイラワディ川ミッソンダムを凍結
   (2011年10月7日『メコン河開発メールニュース』)
※34 China Rocks Myanmar's Diplomatic Boat
   (2014年5月10日『The Wall Street Journal』)
※35 密松电站合作项目有利于中缅互利共赢
   (2011年10月4日『人民日報』、上記紹介記事)
※36 泛亚高铁缅甸段下月动工 昆明将从末端变前沿
   (2014年5月25日『昆明日報』、上記紹介記事)
※37 Myanmar-Yunnan railway canceled due to public opposition
   (2014年7月23日『中國時報』英文版)
※38 China denies abandoning Yunnan-Burma rail line
   (2014年7月25日『Kachin News』)
※39 筆者の実家における家族との会話












「この記事は好評価」なら… ⇒ 下のバナーをクリック!

人気ブログランキングへにほんブログ村 ニュースブログ 海外ニュースへにほんブログ村 政治ブログ 国際政治・外交へブログ王へ




スポンサーサイト
  1. 2014/11/25(火) 21:43:32|
  2. シリーズ記事「減速する中国の外交力と周辺地域動向」(未完)
  3. | トラックバック:0
  4. | コメント:0
<<減速する中国の外交力と周辺地域動向(5) | ホーム | 減速する中国の外交力と周辺地域動向(3)>>

コメント

コメントの投稿


管理者にだけ表示を許可する

トラックバック

トラックバック URL
http://dupinglilun.blog134.fc2.com/tb.php/52-bfb00db3
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

時計


BLOG「獨評立論」

BLOG「獨評立論」です。ブログ名は「獨り評し論を立てる」の意。筆不精ですが、主にアジアを中心にニュースや体験などから「獨評立論」を行います。

Author:DUPINGLILUN
一人の日本人です。一切の企業、団体、宗教等とは無関係です。/ngóa sī Ji̍p-pún-lâng kì-chiá./yat boon yan/JAPANESE

ブログランキング

ブログランキングに参加しております。良い記事であると御評価下さる方は、ぜひバナーのクリックを御願いします。

人気ブログランキングへ にほんブログ村 政治ブログ 国際政治・外交へ
ブログ王へ

最新記事

月別アーカイブ

カテゴリ

獨評立論-未分類 (0)
獨評立論-中国 (23)
獨評立論-日本 (0)
獨評立論-朝鮮半島 (3)
獨評立論-東南アジア (7)
獨評立論-媒体 (2)
獨評立論-その他 (1)
シリーズ記事「謀略鐵路」 (10)
シリーズ記事「減速する中国の外交力と周辺地域動向」(未完) (16)
獨評立論-詩詞 (2)

過去記事全リスト

検索フォーム

最新コメント

リンク

このブログをリンクに追加する

RSSリンクの表示

書棚

メールフォーム

名前:
メール:
件名:
本文:

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。