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減速する中国の外交力と周辺地域動向(1)

減速する中国の外交力と周辺地域動向

  中国の外交力は低下しているのではないか。久し振りの更新となる今回は、このテーマを掘り下げたい。当ブログの観察と論考趣旨は、中国の対外開放政策や交通インフラ整備を通じての周辺諸国への影響力浸透であり、なかでも「中国の対北朝鮮外交は対東南アジア外交の踏襲である」(2010年3月17日、韓国紙『東亜日報』)〔1〕との仮説に基づいて、雲南省から東南アジア方面の動向を観察してきた。約1年のあいだ更新が滞っていたのは筆者の多忙も要因だが、実際に習近平体制発足以後、現地報道では決定的な戦略動向より抽象的なものが目立つようになっていたこともある。
  今回久し振りに記事を更新するのは、ここにきて観察対象の中心でもある対ミャンマー政策・対北朝鮮政策で、中国の外交力の低下が顕著に表れたと感じたからだ。今年2月14日、国際NPO「プロジェクト・シンジケート」が極めて重要な指摘をしている〔2〕

  中国の覇権主義が地域の多くの国々を緊張させている時に、ミャンマーに対する支配の弱体化や、かつての従属国・北朝鮮との関係の悪化が進んでいる。今、北東アジアの地政学は変質している。

―― BRAHMA CHELLANEY 博士 


   韓国の東亜日報
   ▲2010年3月17日『東亜日報』(クリックで大きくなります)

  ブログ更新停止中の両国の重大トピックスから、改めて掘り起こしていきたい。

目次

1. 北朝鮮――「凍土の共和国」
 1.1 張成沢失脚、そして粛清
 1.2 背景にあるのは路線闘争か
  1.2.1 張の罪状と共通する文革実権派の罪状
  1.2.2 路線闘争だった文革
 1.3 罪状に見え隠れする中国の影
  1.3.1 前例:陶鋳と高崗
  1.3.2 広東の実力者・陶鋳の場合――「資本家を丸め込んだ」?
  1.3.3 満州の実力者・高崗の場合――漢奸としての「張作霖さん」
  1.3.4 張の罪状=中国へ通じたこと
  1.3.5 主体思想国家・北朝鮮――「ウリ式社会主義」
2. ミャンマー――「最後のフロンティア」
 2.1 ミャンマーにおける中国の核心的利益
  2.1.1 エネルギー資源確保
  2.1.2 インド洋へのアクセスという側面
  2.1.3 安全保障
 2.2 各利益分野の経過
  2.2.1 ミッソンダム計画の停止
  2.2.2 ミャンマー行き鉄道の建設中止
  2.2.3 なぜプロジェクトは減速したのか
 2.3 ミャンマーの外交方針の転換
  2.3.1 ミャンマーと中国の関係とその変化
  2.3.2 ミャンマーと中国~「胞波」としての蜜月とプレゼンスの低下~
  2.3.3 余談:宋文洲氏の2014年2月27日tweetの位置付け
  2.3.4 中国側にもあった対ミャンマー首脳外交の空白要因
  2.3.5 対中過剰依存からの脱却という結果
3. 中国の外交力の減速――背景としての習政権の世界観
4. 習政権はどうするのか——紅衛兵時代の歴史との符号
 4.1. 北朝鮮との不和、ミャンマーの春
 4.2. 宗主国としての紅衛兵的宇宙観
 4.3. 有事の可能性:北朝鮮への介入
 4.4. 教訓としての東南アジアの歴史――中越戦争と当時の『北京週報』
  4.4.1. ベトナムの民主カンプチア侵攻と、背景としての中ソ対立の影
   ・北京週報に見るベトナムへの理論的攻撃
   ・南方「中華」へのソ連の影響力を座視できなかった中国
 4.4. 教訓としての東南アジアの歴史――中越戦争と当時の『北京週報』
  4.4.1. ベトナムの民主カンプチア侵攻と、背景としての中ソ対立の影
   ・北京週報に見るベトナムへの理論的攻撃
   ・南方「中華」へのソ連の影響力を座視できなかった中国
  4.4.2. ベトナム侵攻と、背景としてのベトナムによる華僑弾圧
   ・南ベトナム共産化が圧迫したのは華僑商人
   ・中国の華僑工作の位置付け 文革派・脱文革派も資本家を重視
   ・華僑工作の目的:国府を「中華」の海に埋葬する
   ・北京週報論文と中国海油:続いてきた中華系資本の重視とアピールの具体例
  4.4.3. ベトナム侵攻と、文革派の残存という中国国内の路線闘争
   ・中国人民解放軍における2つの軍事路線
   ・文革前夜にみる路線対立:彭と羅の近代化路線
   ・軍事路線の対立の象徴:羅瑞卿論文と林彪論文
   ・文革前夜に優位を決定した人民戦争論
   ・文革後も続く軍事路線の対立と鄧小平
   ・中越戦争前後の軍内の理論闘争と結末
   ・軍権の掌握という問題:現在の習近平政権
  4.4.4. 周辺の友好勢力を中華秩序の一員とする民族主義的体質
   ・中国とベトナムの共通点:自国を宇宙の中心と規定する中華思想
   ・南方に行くほど強い?中華秩序的宇宙観
   ・徹底したベトナムの中華秩序:対南工作と対ラオス・対カンボジア工作
   ・各国の共産化後:大インドシナ連邦の可能性
   ・民族主義的宇宙観が必然的に招いた中越戦争
   ・北ベトナムの工作に近似する北朝鮮の対南工作と、現在の中朝関係
  4.4.5. 余談:中越戦争の例に対する補完材料――1965年の「9月30日事件」
   ・「9月30日事件」の背景
   ・「日本最強の社会主義者」岸信介の予言的演説
   ・「9月30日事件」の発生
   ・中国にとっての「9月30日事件」のインパクト:国際的連帯の解体
   ・スハルト批判の北京週報論文 ~中越戦争の20年前におきた宣伝戦~
   ・中越戦争同様の華僑工作 ~国府ではなく中共こそ華僑の祖国~
5. 冷戦時の中国の行動原理は応用可能か
 5.1. 冷戦期の指導理論:毛沢東思想が持つ永続性
 5.2. 鄧小平復権の起点としての毛沢東思想
 5.3. 現在の中国:毛沢東思想を起点とする鄧小平理論を堅持
 5.4. 習近平に見え隠れする毛沢東思想の影響
6. 北東アと東南アを同一視する現在の中国
 6.1 過去との近似:北朝鮮政策に表面化するベトナム政策
  6.1.1 人民日報に見る北朝鮮とベトナム
  6.1.2 2011年12月20日の人民日報にみる中朝の方向性の差
  6.1.3 2012年1月1日の人民日報にみる中国の望む「新しい歴史的条件」
  6.1.4 人民日報に読み取れた中国の朝鮮への圧力






1. 北朝鮮――「凍土の共和国」

1.1 張成沢失脚、そして粛清

  2013年12月12日、国防委員会副委員長・張成沢が粛清された。北朝鮮の初代最高指導者・金日成の娘を妻に持ち、第2代最高指導者・金正日の義弟として側近中の側近であり続け、現最高指導者・金正恩の後見人として党・国・軍に影響力を行使してきた金正恩体制ナンバー2の失脚は、世界中に大きなインパクトを与えた。処分は朝鮮労働党からの除名、全ての役職と称号の剥奪、そして「国家転覆陰謀行為」による死刑判決を受けての銃殺だった。朝鮮中央通信は驚くべきことに朴憲永(朝鮮労働党の源流である南朝鮮労働党のリーダーであり、後に金日成によって粛清された)になぞらえ、「極悪な宗派(分派)集団」と放送した〔3〕

1.2 背景にあるのは路線闘争か

1.2.1 張の罪状と共通する文革実権派の罪状

  朝鮮中央通信の報じた張の「罪状」を勘案するに、この粛清劇には張の執務能力や人望などに対し金正恩が脅威を覚えたというだけでなく、国家の運営・政策における路線闘争の芽が有ったことが確実視される。そう考える理由は、毛沢東時代に起きた中国の文化大革命と重なって見えるからだ。
 列挙された張の罪状の中には、繰り返し「敵の回し者」「不正・腐敗行為」などに加え、「外貨を蕩尽」「党内に新しく芽生える危険極まりない分派的行動」という文面が出てくる。これはまさに文革で失脚した劉少奇の罪状「叛徒、内奸、工賊〔反逆者、敵の回し者、労働者階級の裏切り者〕」と共通する〔4〕

1.2.2 路線闘争だった文革

  文化大革命は中国における深刻な路線闘争が、最もドラスティックな形で表面化した粛清劇であった。文革におけるソビエト修正主義毛沢東ら文革派が劉少奇ら実権派に対して攻撃を仕掛けた際のレッテルは、「蘇修(ソビエト修正主義)」というものであったが、この根底にあるのは「共産主義の裏切り者」という意味である。文革の発動は、毛沢東の「共産主義が修正主義や改良主義によって変質している」との強い懸念があったことが背景だ〔5〕。その認識は、毛沢東の意図を察知した周恩来が、1964年12月に「資本主義の暗い風が絶え間なく吹き込んでくる」「党、政府機関、経済機構でも、絶えずブルジョワ分子、搾取分子らが生まれてくる。これらはいつも上級の指導機関の中にその保護者や代理人を探すもの」と簡潔に披露している〔6〕。そしてその標的が、大躍進運動という毛沢東の路線の修正と回復を図る劉少奇・鄧小平路線だった。アメリカのジャーナリストの「劉少奇は立ち去らねばならないと決意したのはいつか」との問いに「1965年1月」と答えており、翌年、文革を発動している〔7〕

1.3 罪状に見え隠れする中国の影

1.3.1 前例:陶鋳と高崗

  では張は具体的に、どういった「敵の回し者」ゆえに、「反逆者」であり「労働者階級の裏切り者」という扱いを受けることになったのか。今回の張の粛清劇についての報道を見るたびに、筆者は或る既視感を強くした。それは文革期に失脚した広東の実力者・陶鋳と、スターリン死去直後に失脚した満州の実力者・高崗の事例である。

1.3.2 広東の実力者・陶鋳の場合――「資本家を丸め込んだ」?

  陶鋳の失脚における「罪状」には、「叛徒」「反革命」以外に「香港やマカオの資本家を丸めこんで個人的権威を高めようとした」〔8〕というものがある。これが「外貨を蕩尽」「党内に新しく芽生える危険極まりない分派的行動」という張の「罪状」に限りなく酷似している印象を持った。事実、張は北朝鮮内部でも親中国派として見られており、先ごろは粛清後も北朝鮮・平壌の中国大使館がホームページに張の写真を掲載し続けているとして話題になっている〔9〕。とするならば、張は間違いなく北朝鮮における改革開放路線を代表する人物であり、中国を通じて体制の中で柔軟な路線を志向していたことは間違いない。
  ここで再び張の罪状の中で「党内に新しく芽生える危険極まりない分派的行動」という文面に注目するとともに、中国における時計の針を更に文革以前に戻す。舞台は東北、旧満州。まさに北朝鮮に隣接する地域で、かつて中国共産党の中でも高い地位にありながら、陶鋳や劉少奇同様に、そして分派的行動を非難され失脚した人物がいる。それが高崗である。

1.3.3 満州の実力者・高崗の場合――漢奸としての「張作霖さん」

  高崗の失脚における罪状には、「反党分裂活動を起こした」とあり、やはり「党内に新しく芽生える危険極まりない分派的行動」という張の「罪状」に限りなく酷似している。また高崗は「満州を独立王国たらしめようとした」という非難もなされている。彼はすでに中国建国以前、活動拠点の満州で「ソ連・東北人民政府貿易協定」を結ぶなどして独自の地方運営を行っており、ソビエトのヨシフ・スターリンとの関係は極めて緊密だった。当時の満州は「中国の中のソ連」といわれ、毛沢東よりスターリンの肖像画のほうが多く、毛沢東は「ここはどこの国だ」と不快感をあらわにしたという。致命的なことに高は、中国建国直前の1949年7月にはスターリンに対して「東北地方をソビエト連邦17番目の国家としてはどうか」と提案し、逆にスターリンから「(日本帝国主義の傀儡政権の役割を担った)張作霖さん」と呼ばれ、同行の劉少奇はその様子を即座に毛沢東へ打電している〔10〕
  スターリン死去直後に服毒自殺しているが、高は中国における広義の意味でソ連のエージェントであった。だとするならば、今回の張の粛清劇において、高と酷似したレッテルが張られていることは極めて興味深い事実ではないだろうか。

1.3.4 張の罪状=中国へ通じたこと

  上記2つの論考から結論を書く。明らかに金正恩は、張成沢の存在に資本主義的な(古典的表現でいえば修正主義的・改良主義的な)中国の影を見ていた。金正恩は父である故・金正日総書記の遺訓に従って、「中国のスパイ」張成沢を逮捕・処刑したのである。金正日の遺訓とは、要旨以下のようなものであった〔11〕

  「朝鮮民族2000年の敵として最も警戒すべきは中国」
  「歴史的にわれわれを最も苦しめた国が中国」
  「中国は今後、最も警戒すべき国となる可能性がある」


(続く)



※ 1 2010年3月17日、韓国紙『東亜日報』
   (当記事の画像参照)
※ 2 Friendless China(BRAHMA CHELLANEY)
   (2014年2月13日『PROJECT SYNDICATE』)
※ 3 朝鮮労働党中央委員会政治局拡大会議に関する報道
   (2013年12月8日『朝鮮中央通信』)
※ 4 關于叛徒、内奸、工賊劉少奇罪行的審査報告
   (1968年10月18日 中央專案審査小組)
※ 5 文化大革命, 3.第三世界の自立と東西ブロック内の動揺, 第17章 戦後世界と東西対立
   (山川出版社『詳説世界史研究』第8刷, 2000年, 509頁)
※ 6 周恩來總理作政府工作報告
   (1964年12月31日『人民日報』第1版)
※ 7 林彪の誓い「敵を有頂天にさせ殲滅する」, 第三章 人民戦争の勝利万歳
   (産経新聞社『毛沢東秘録』
※ 8 中公新書『香港回帰―アジア新世紀の命運』 中嶋 嶺雄)
※ 9 張成澤照片 出現中駐北韓使館網頁
   (2014年2月11日『國際新聞』)
※10 講談社プラスアルファ新書『悪の三国志―スターリン・毛沢東・金日成』
※11 김정일 유훈 … 중국, 가깝지만 가장 경계할 국가
   (2012年04月13日『中央日報』)



















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