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2011年末の雲南関連動向(1)

1. 雲南省の開発戦略「“橋頭堡”戦略」に関連して

  暫く放置していた本ブログであるが、昨年より一貫して観察を続けてきた中国雲南省の開発戦略「橋頭堡戦略」に於いて、最近若干の変化が見られる。
  それを今回は辿っていくことにしたい。

  既に過去の記事で述べたとおり、雲南省からミャンマーを通じインド洋へ進出するのは中国の基本的な対外戦略の一であり、それは現在も変わりはない。

  しかしミャンマーの側の情勢は最近大きく変化している。


2. ミャンマーに於ける情勢の変化

2.1 昨今の動向

  2011年9月にミャンマーは中国も関与する大規模なダム計画を中断した。そして直後に、デリーでテインセイン大統領がインドに歓迎をうけるという構図が発生している〔※1〕

  このダム計画とは、先の2011年6月9日から中国・ミャンマー国境付近に位置するカチン州でミャンマー政府軍と少数民族カチン族の反政府武装組織「カチン独立軍」(KIA)が衝突した際〔※2〕、専門家が「この地区の民族関係が緊迫」「中国のエネルギー需要にとって極めて重要」と言及するほどの計画である〔※3〕ミッソンダム建設計画である(正確に言えば、6月に軍事衝突が起きたのはターペイン第一ダム・第二ダムの周辺〔※4〕であるが)。さらに関連事業に関与しているのは中国国営の中国電力投資公司(CPIC)である。

  こういった流れを受けて、中国としてはミャンマーの計画を手放さぬために、またミャンマーとしては中国との関係悪化を防ぐべく、今年秋には両国間で何度も話し合いがもたれている。
  ミャンマー側のワナ・マウン・ルウィン外相は2011年10月10日に大統領特使として北京を訪問し、中国の国家副主席である習近平らと会談を行い、ダムの建設中断問題などについて協議した。中国側は建設という方針について見直しを迫ったという。〔※5〕
  また、11月28日にはミャンマー国軍の最高司令官であるミン・アウン・ラインが北京の人民大会堂で、やはり国家副主席であり中央軍事委員会副主席である習近平らと会見を行っている〔※6〕。また、中国人民解放軍の総参謀長である陳炳徳も個別に会談を行っている〔※7〕〔※8〕。彼は空母建造を公に認め、米国訪問の際にも海軍力についての渇望をのぞかせた人物である。

2.2 ミャンマー情勢の変化の背景

  こういった動きの裏にあるのは、現軍事政権の路線転換であろう。

  なお、単純に「強くなりすぎた中国の影響力を排除したい」というわけではないとも言える。これと前後してのミャンマーの民主化勢力への一定の譲歩、そしてそれを受けてのアメリカとの歩み寄りの状況から見て、現在の国内状況の改善を図る狙いがあると考える方が自然であろう〔※9〕

  いずれにしても各国は米中両国ともうまくやっていき、その中で国益同志の鬩ぎ合いをおこなっているわけであるが、問題なのは、日本だけは逆行しているという感覚が拭えぬ件であろう。



3. 情勢の変化に逆行するかの如き日本

  中国は必死にインド洋に進出したがっており、一方で海路の安全を世界の警察として確保するということだけはアメリカの至上課題であり、それは尖閣以来明らかになった(結果ここで保守層の間に安易にまた米中対決論が浮上したわけだが、私は米中の関係はますます強固になると考える)。

  そういった状況下、シーレーン問題に関しては領土問題とは異なりアメリカも中国には一歩も譲らずという感じではあるのだが、日本はスリランカ財政部と合意を締結し、インド洋に出たがっている中国が大歓迎する案件でもある440億ルピーの(約3.96億ドル)の援助の提供が以前に決まっているのである。これは中国の「橋頭堡戦略」専門ネットワークから堂々とニュースで発表され、しかも締結されたのは、東日本大震災直後の3月23日という有り様である〔※10〕


4. 中国とインド洋

4.1 21世紀は「向西看」

  中国としては過去も現在も、そしてこれからもインド洋方向への進出にテコ入れを行いたい。

  その上で12月4日のシンガポール発の報道は注目に値しよう〔※11〕
  興味深い論考が書かれているが、実はこの記事は、もともとは新華社の雲南分社で党組織の書記を務め更にはその支局社長でもある久翔という人物が書いたものである。また、そもそもは連名での発表であり、もう一人は楊躍萍という名の雲南大學經濟學院を卒業したジャーナリストである。

中国の対外開放戦略は西南に転移した


西南の開放政策に“総動員”をおこなう

中国の対外戦略は20世紀は東に向っていたが(向東看)、21世紀は西を向いていく(向西看)。その中の最も重要な方角が西南方向のインド洋地区である


  このアウトライン自体に変更はない。

4.2 インド洋進出の先進事例としてのスリランカ周辺の中国の動き

  中国がインド洋の拠点の一つと考える、スリランカ方面の動きも着々と進行してきている。

  これまでは中国はスリランカ南部のハンバントッタ[漢班托塔]に力を注いでいたが、一応は2007年の秋に中国の援助で港湾設備の整備が開始されて、将来の目途が立った格好となった。
  この結果、雲南からパイプライン・鉄道・道路の建設計画が進行中のミャンマーのチャウピュー[皎漂:Kyaukpyu,Kyaukphyu]からの海路がとりあえずインド洋の中間まで一直線に繋がることになる。
  スリランカ本島であるセイロン島南部のゴールを迂回すれば中東まで直ぐという環境が整う中、峠越えに挑む鉄道を敷設するかの如く迂回の前後にも基地が欲しい。
  そこで首都のコロンボにも整備と投資を行い影響力を高めておきたいというのが中国の狙いである。

  先述の東日本大震災直後の援助は、一応はコロンボ市内の交通インフラの整備に充てられるという名目になってはいるが、それが中国の対インド洋戦略のニュースソースから報道されているというのが、この援助の色彩を物語っているとは言えないだろうか。



5. 真珠の首飾りを買うにはカネが要る

  そもそも中国は2009年にスリランカへの最大の資金援助国になっており〔※12〕、しかもそれに次ぐのは4億2300万ドルのアジア開発銀行。こちらは発展途上国への融資を目的とする国際機関であるが、資金を最も出しているのが日本であり、歴代総裁は財務省関係者という、事実上、ODAに代わる中国への迂回融資ルートでもある。
  中国では「國際銀行(日本資産多量),主要資金來源是日本,因而歷屆總裁都是日本國民」というのが合言葉のような「国際機関」である。
  そして三番目に出資するのは2億4100万ドルの世界銀行で、日本はここでも出資額2位の地位にある。
  しかもこういった流れに先んじて、ハンバントッタには2006年に国際空港建設が開始され、コロンボとは鉄道で結ばれるというアウトラインが描かれている。



6. 潮流と変化と

  こういった流れにインドは非常に警戒感を高めているのであるが〔※13〕〔※14〕、2010年には直接雲南省の省長がスリランカを訪れて、スリランカと雲南省を如何に結びつけるかと「雲南とインド洋の首飾り」を強調し、しかも同日にミャンマーのタン・シュエ議長が北京で胡錦濤・温家宝と会談を決定している。
  中国東方航空が正式に昆明~コロンボ~マレの国際線を正式開通したのは、雲南省省長がスリランカを訪問したその4日後である〔※15〕
 
  他の国々がそれなりに海路を確保し、それでいて中国ともうまくやっていく中、日本だけが金を出し続けるという構図がある。
  そして現在、ミャンマーが実情はどうあれ中国と距離を取り始めるかのような動きを見せつつある中でも、日本では一向に国際的な動向として変化もないのが現状なのである。



(続く)





【参考】

※1  India offers Myanmar $500m Line of Credit
   (2011年10月15日『INDIA TODAY』)
※2  マラッカ海峡封鎖を無効化する中国の戦略と、中国・ミャンマー国境付近での武力衝突
   (2011年6月24日 本ブログ過去記事)
※3  缅甸克钦独立武装称暂不会袭击中缅油气管道
   (2011年6月21日『华夏经纬网』)
※4  +24° 24' 30.83", +97° 30' 26.01"
   (Google Maps)
※5  Xi Jinping Meets with Special Envoy of Myanmar President
   (2011年10月10日、Ministry of Foreign Affairs, the People's Republic of China[中華人民共和國外交部])
※6  Chinese Vice President vows to further ties with Myanmar
   (2011年11月28日『Xinhua, english.news.cn.』)
※7  China, Myanmar to enhance military ties
   (2011年11月28日『Xinhua, english.news.cn.』)
※8  陳炳與緬甸國防軍總司令會談
   (2011年11月28日『國際日報』)
※9  媒體評美國與緬甸:新關係是未知數 舊傷痕仍刺眼
   (2011年12月12日『中國新聞周刊』掲載記事)
   (日本《產經新聞》認為,…と有るのが面白い)
※10 日本向斯里兰卡提供440亿卢比援助
   (2011年3月24日『中国商务部网站』)
※11 瞭望:中國對外開放戰略向西南轉移
   (2011年12月4日『星島日報』)
※12 China - Sri Lanka’s top lender in 2009
   (2010年4月18日『Sunday Observer』Sri Lanka News)
※13 Securing China's oil imports from the Middle East
   (2010年9月1日『The International Business Times』)
※14 India chagrined at Lankan ties with Pakistan and China
   (2010年6月13日『RUPEE NEWS』)
※15 云南桥头堡建设再添新翼 昆明-科伦坡-马累航线开通
   (2010年8月31日『昆明信息港』)
















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