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北京・上海「新幹線」騒動

  世界的な観光地としても知られる旧ポルトガル植民地・マカオ。2009年の大晦日、自分は聖ラザロ教会[Igreja de São Lázaro,望堂]に程近い茶餐廳で、珈琲を飲みながらマカオの新聞『澳門日報(マカオ日報)』を読んでいた。

  正式名称「中華人民共和國澳門特別行政區」、ポルトガル語では"Região Administrativa Especial de Macau da Rep、ública Popular da China"という長い名前を冠する、この小さな中国大陸南岸の珠江デルタに位置する特別行政区は、マスメディアについては芸能・エンターテイメントを中心にすぐ隣に位置する香港の影響が強い。
  マカオ出身のスターも大抵は香港を中心に活動しており、マカオにあるテレビ局もつまらないと有名で、住民はほとんどの情報を香港のテレビやから入手する。
  その中で、『澳門日報(マカオ日報)』は地元の新聞として庶民にも親しまれ、大抵の茶餐廳や喫茶店に置いてあり、私は朝食の出来上がりを待つ間、珈琲を飲みながら新聞に手を伸ばした。


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  この新聞はABCDと4部から成り立っており、それぞれ経済情報や芸能情報などで冊子が分かれているのだが、自分がたまたま手に取ったものの一面には、日本の新幹線「E2」にそっくりな「CRH2」型の写真が大きく掲載されていた。
  その直前の2009年12月26日に開業した中国の高速鉄道「武廣客運專線」(武漢・広州間)において、全車両が禁煙となっているにもかかわらず車内の乗客による煙草の煙で機械故障が発生し、発車が2時間遅れたという。
  これまで所要時間が約11時間だった広州と武漢を、約3時間で結ぶ中国版の新幹線であるが、開業4日目にしての故障遅延、しかも原因が乗客にあったというニュースである。これは日本でも年明けにセンセーショナルに報道された。
  スピードなどハード面での向上は良いが、一方であの国に於けるじ乗客のマナーが追いついていないという論調である。
  共産主義青年団系の新聞『中國青年報』は、日本と中国の鉄道網でもっとも異なるのは「乗車環境」だと指摘している。

  さて、今話題の中国の「パクリ新幹線」である。

  北京と上海という二大都市を結ぶ京滬線の混雑緩和と高速連絡を目的に建設された、いわば中国の東海道新幹線とも言える高速鉄道。この鉄道が6月30日に営業運転を開始し、世界的に注目されている。この新幹線は速度だけでなく、別の意味でも論議を呼んでいる。知的財産権の問題であり、それは日本の新幹線の技術を盗用したものではないのかというのだ。

  新幹線は中国にとって近代化の象徴である。
  先日の『中國評論』の記事「京滬高鐵開通展示中國整體發展的縮影」の例を引くまでもないが、約三十年前の1978年に来日した小平は

  乘坐新幹線後才感受到什麼是現代化的速度。
  新幹線に乗って何が近代化のスピードたるかを感じることができた。

と述べ、日本が1964年の東海道新幹線開通によってに戦後の復興と高度経済成長を世界に誇ったように、近代化の象徴として高速鉄道網の建設が意識された。

  中国共産党建党90周年に合わせて先頃ついに完成し開業したこの中国版新幹線であるが、開通から一週間余り、すでにこちらも故障が幾度か発生している、電力供給設備に於ける障害や、落雷による架線の故障などである。

  自分は、技術を幾ら取り入れて高速鉄道網を整備させようとも、それを使う人間によって大きくその質は左右されるのだということを意識せざるを得ない。

  冒頭に述べた2009年の乗客による喫煙から発生した機械故障は、笑い話では済まない。
  日本では東海道新幹線が開業して以来、投身自殺などを除けば死亡事故は発生しておらず、安全性の高さやそれを確保するシステム運用での維持、並びにそれを支える技術の水準は良く知られている。
  しかし中国に於いてはどうであろう。乗客のマナーも併せ、以後の運用について非常に懸念されるものである。

  新幹線とは、そもそも精密な保守点検などを手を抜くことなく行い、その上ではじめて走行が可能な設備である。
  東海道新幹線では一番コストがかかっているのは、線路の保守である。千数百人の保線夫が保守にかかり、一番電車が通る前に試験電車を走らせチェックするという作業を毎日行っている。山陽新幹線以降の整備新幹線は状況が異なるが、それだけデリケートな設備であるという事は念頭に置いておかねばならない。

  東日本大震災発生時には、トンネルや橋梁などへのダメージはともかく、転覆事故などは防がれ、時速270キロ前後で走行していた列車にも「想定外」の地震が起こったにも関わらず新幹線早期地震検知システムによって全ての新幹線が緊急停止を行い、脱線・事故は1件も起きなかった。

  この先さらに高速鉄道網を、地震の発生する雲南からインドシナ半島地域へ拡大していくという情報もあるが、日本やドイツから「パクリ」を行った中国の関係セクションがどのように運行していくのかというのは見物である。

  日本では技術面よりも何よりも「パクリ」というモラルの問題が取り上げられているが、これで思い起こされるのは2004年4月16日の『環球時報』の記事である。
  この記事「“软实力”也是强国之本」(ソフトパワーは強国の基礎)では

  中国は独自のイノベーションシステムを欠いている。
  それは科学技術から大衆文化まで、中国はいまだ「拿来主義」なのであり、それがただ唯一の選択肢なのかもしれない。
  しかしここに中国と西側諸国との間の大きなギャップを見ることができよう。

と指摘している。この「拿来主義」とは魯迅が提唱したもので、「他国が創造し発明したものを自国に持ってきて役立てること」である。
  中国側の感覚としては、手間は省けリスクも少なく良いところを取っていく実用主義であるというものだ。

  確かに成長期の新興国にとってはコレは一つの有効な手段であるかも知れない。
  だが古来より中国に学んで独自に文化を発達させてきた「換骨奪胎」の国である日本からすれば、鉄道部が「盗用とはナンセンスだ、わが高速鉄道は新幹線をしのぐ」と言い訳に終始するのは、大国・中国としては余りにもお粗末ではないだろうか。

  また、日本は採り入れたものを自らの創造物として逆に大陸側へ返しているという事実も考えてしまう。
  当の「中華人民共和国」という国名に於いて、「人民」や「共和国」などは和製漢語であるというのは良く知られた話である。
  自分の知る例でいえば、中国語で「電話(ディエンホア)」は、言うまでもなく電話(telephone)。清朝末期の大陸では徳律風(トーリーフォン)と文字を当てたらしいが、結局日本から「逆輸入」した「電話」という和製漢語に取って代わられた。



  最後は脱線気味な話になってしまったが、中国は自らのハードを果たしてどのようにソフトパワーを発展させて消費、進化、退化、動産、輸出(以上全て和製漢語)などしていくのか、大いに興味深いところである。

  最後に。上述の通り中国は、地震の発生する雲南からインドシナ半島地域へ、この先さらに高速鉄道網を拡大していくという。それを伝えるタイのニュースと中国側のラオスに対するプレゼンテーション映像を紹介しておく。後者では、CGによるインドシナのジャングルをゆく中国の高速鉄道のイメージが描写されている。


















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