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中国情報に権力闘争の匂い

  据吴康民透露,温家宝在会面中向他谈到内地政治改革的困难,说内地现有两股势力,一是封建残余,一是文革遗毒。这两股势力造成一些人不肯讲真话,喜欢讲大话、套话。

The Voice of America「温家宝携夫人见港左派代表引发猜测」 




  先の2011年4月28日、アメリカの国営ラジオ放送『ボイス・オブ・アメリカ』(The Voice of America:VOA 日本語名「アメリカの声」)の標準中国語放送で「温家宝携夫人见港左派代表引发猜测」という報道がなされた(VOAには、広東語放送というものも存在する)。

  また同時期に知人より、朝日新聞の記事「『中国内、うそ好む二つの勢力』温首相発言、臆測呼ぶ」(asahi.com 朝日新聞社)の背景を知りたい、とも言われていた。今回の記事ではこのあたりのニュースを読み解き、現在激化していると思われる中国共産党内の権力闘争の様子を考えたい。



1.香港左派の背景

1-1.会見相手と香港左派

  まず「温家宝携夫人见港左派代表引发猜测」とは、意訳すれば「温家宝が夫人を伴って香港左派と会見したことは、さまざまな推測を誘発した」というものだが、この会見相手は全国人民代表大会代表の呉康民であり、彼は香港左派の元老級の人物である。

  彼は香港の左派(親・大陸中国派)だが、政府の施政に対して批判的な文章を良く寄稿し、大陸側の政治改革を加速するよう促す論陣を張ってきた。特に昨年、中国の胡錦涛主席が李嘉誠長江実業会長と単独会見したことを批判していた人物である。

  香港では、2007年3月25日の行政長官選挙において曾蔭權という人物が香港の行政長官、すなわち香港政治のトップに選ばれたのだが、香港は言うまでもなく今や中華人民共和国の一部であり、建前はどうあれ、この人事は中国の中央政府の意向や影響が強く働いたものであった。

  しかし、曾蔭權は敬虔なカトリック教徒であり、イギリス統治下の香港政庁の官僚出身であることと併せ、香港左派から就任前に警戒されていた人物である。経歴と思想からも完全に英国式の人物で、イギリス領時代からのキャリア高級官僚であり、蝶ネクタイを愛用していることから「蝶ネクタイの曽(煲呔曾、Bow-Tied Tsang)」のあだ名を持ち、さらにイギリス領香港政庁時代に官僚としての卓越した優秀さからナイトの称号を叙勲して保持している曾蔭權(英名Donald Tsang Yam Kuen)を、中央政府が適任者として選んだ。それに対して現地香港の親中派が「あまりにも明確な親英派の人物である」と懸念したという、ある種のアンビバレンツな状況が今の香港には有る。

  よって、曾蔭權の行政長官就任以降、左派勢力には「我々は中央政府にあまり重視されていない」という不満、悪く言えばジェラシーがあると言えよう。

1-2.香港左派と中国共産党

  これは香港の左派勢力に以前よりありがちなのであるが、中央政府よりでありながら最終的には冷遇されていくという、いわば「裏切られた革命」的な現実に直面することが多々ある(トロツキーの同名の著書とは意味合いが異なる)。

  特にその象徴は文革期の香港左派であった。一貫して香港左派を「左翼ナショナリズム」的に「香港や台湾省は同胞であり、各方面で結束すべき」と規定している中国共産党であるが、文革期には、様々なパイプで繋がっていたと思われる中国共産党の広東省の実力者・陶鋳の失脚などとパラレルな形で中国共産党から距離を置かれた。
  失脚を免れた共産党政府のNo.2で穏健派の周恩来が「長期的な利益から香港を回収しない方針」を明らかにし、さらに陶鋳と同一視されることを恐れた中国共産党内部の勢力は香港の左派と距離を置くようになった。
  他ならぬ陶鋳の失脚の「罪状」の一つが「香港やマカオの資本家を丸めこんで個人的権威を高めようとした」であり、陶鋳は地方幹部から中国共産党No.4に大抜擢されながら、半年で反革命分子扱いされ失脚をくらい、迫害死したのである。

1-3.香港左派の背景と会見の目的

  以上のような背景が香港の左派には存在する。繰り返せば、現在の香港左派には「我々は中央政府にあまり重視されていない」という不満がある。

  ゆえにVOAや香港各紙の報道によれば、今回の会談は立法会や行政長官の選挙を控え、左派勢力の不満解消を狙ったものともみられているという。

1-4.会見の事実関係

  この会談自体の事実関係としては、温家宝と呉康民の両者が4月22日、北京・中南海で夫人を伴って昼食を取りながら会談を行い、呉氏は次期行政長官の人選に関する話題を持ち出したが、温首相は笑っているだけで何も答えなかった。温首相夫妻はただ彼らを宴席を開いて終わったということである。



2.なぜ妻の同伴が話題となっているのか

2-1.温家宝の妻、張培莉

  温家宝夫人は国際的な慣習にもかかわらず、数年間同伴したことがなかった。

  今回その妻が同伴したことで話題になっているのは、その妻に関して黒いうわさが絶えないという事情もある。

  温家宝首相は政治家然とした印象の人物ではなく、親しみやすい「平民宰相」「人民の総理」というのが売りで「宝宝(宝ちゃん)」と呼ばれており、政治的姿勢も穏健派で、天安門事件時には学生に同情的として一度失脚もしており、権力闘争に関しては距離を置いているという見方が一般的の人物である。

  しかし、その彼のネックになるのが妻の存在であった。

  汚職や賄賂に対して厳しい姿勢を示すため、商才があって手広く商売を始めたいという思考の妻とは離縁経験がある。
  大陸中国人として初めて英国宝石鑑定士資格を取得、北京ダイヤモンド宝石公司トップとして中国宝石協会副主席までキャリアを積み上げてきた夫人は、温の首相就任を翌年に控えた2002年以降、ビジネスから身を引いたと伝えられていた。しかし温の家族をめぐっては、長男である温雲松、長女である温如春が父の威光を笠に企業のトップとして権力を行使するなどの報道が絶えず、しかもその噂の出所は「南方の大都市」と言われていた。

  ここに、そしてアモイに根をもつ時期総書記候補の習近平や、太子党の派閥らが陰で糸を引いているのではないかとも言われており、温家宝は“彼ら”に口実を与えないよう、離婚を決断したとも言われていた。

2-2.温家宝の妻に関するニュースは海外のみ

  今回温家宝の妻の同伴が話題になるのは、こういった事情が存在するがゆえのことなのである。
  そしてその事実が、中国共産党内の権力闘争と直結するデリケートな問題でもあるという背景がある。特に注意すべきは、大陸の中でこのニュースは殆ど皆無であり、あくまで海外、香港、台湾のメディアで散見されたニュースであったという事実である。



3.話題を呼んだ会見の背後で

3-1.温家宝と習近平:対香港

  香港の有名な政界人、立法会議員の梁国雄は以下のような認識を示している。

  今回の温家宝の会見は、温家宝側から接見したということになるため、実際には中国共産党の基本的なやり方に符合しないものではないのか、と。

  さらに、彼はこう指摘してもいる。中国共産党には香港とマカオの活動グループ「中央港澳工作协调小组」というのが有るのだすが、このチームの主任は習近平なのだと。

3-2.温家宝と習近平:外交路線

  これもまた一つのエピソードなのだが、温家宝首相が2010年11月14日に訪問先のマカオで行った発言が、中国国内外で大きな波紋を呼んだことがある。

  マカオ市内の公園で朝の体操をしている市民たちといっしょに太極拳に興じた温首相は、報道機関の前で「またいっしょに太極拳をやりたいですね。私の引退後、みんなで北京に遊びに来てください」と市民たちに声をかけたというのだ。

  温家宝首相の任期は2013年3月までであるにも拘わらず、5年ある任期を約半分も残している時点で「引退」に言及したことは周囲を驚かせたという。中国に限らず、どこの国でも指導者が「引退」を周りに意識させた瞬間から、求心力の低下が始まるといわれ、香港紙などでは「権力闘争に敗れた温首相が意気消沈した裏付けだ」とこの発言を分析したともいう。 この事実は日本では産経新聞が「習路線へかじ切る外交」と題して報じた。

3-3.二つの事実の反映

  梁国雄は、温家宝の会見を通じて二つの事実が反映されていると述べた。

  そのうちの一つが、中国共産党の権力移譲の過程で権力闘争が起き、しかも香港で権力闘争が行われている(香港問題を通じ、香港を軸にして、香港を通じ表面化した…の意味)というものである。

  そして、最も恐ろしいことではあるが、彼らの権力闘争、それも中国共産党トップあるいは香港の行政長官の関連であるにも関わらず、香港人と中国人民には、全く話をし得る余地がないということである。

  繰り返すが、大陸の中でこのニュースは殆ど皆無であり、あくまで海外、香港、台湾のメディアで散見されたニュースであったという事実である。

  北京在住のライターによれば「そのようなニュースはタブーであり、存在しない」という。



4.権力闘争:現指導部と太子党

  いずれにしても、この会見は様々な形で波紋を呼んだ。

  ひとつは温家宝首相が妻を伴ったという事実、そしてもう一つが彼が口にしたという発言内容である。

  中国国内に二つの勢力が現れている。一つは封建社会の遺物、もう一つは文化大革命の負の残滓(ざんし)だ。
  彼らは真実を語らせず、好んでうそを言う。


  これらの発言は明らかに特定の勢力を意識しての発言である。

  恐らくこの背景にあるのは、重慶市委員会書記の薄煕来の存在であろう。

  温家宝の発言に先立ち話題になった重慶における「打除悪」キャンペーンや、文革期のごときスローガンの洪水や政治キャンペーンを進めたのが、この薄煕来である。ドイツの国際放送事業体である『Deutsche Welle』からは、これら一連のキャンペーンは完全に「左旋回」、すなわち共産主義的に回帰した中国の政治路線の表面化と見られている。

  薄熙来は故錦濤や温家宝とは不仲説もあり、一方では習近平との関係は良好であるとみられている。

  薄煕来は文革期に紅衛兵として運動を行った際、「親が革命家なら子も革命家、親が資本家なら子も資本家」とする血統論を宣伝したグループ「連動」に所属していたという。こういった考えは、中国や北朝鮮の党関係者の中に根強くあるプライドのようなものである。儒教の影響か、この考えは広く中国や北朝鮮にあるのだが、革命の元老である薄一波を父に持つ薄煕来は、この結党論を宣伝した紅衛兵に所属していたことと併せて考えても、まさに太子党の中の太子党であるといえよう。

  今回の温家宝の発言は、この薄熙来の文革期を想起させられる政治キャンペーン、政治姿勢に対する批判であり、そしてそれは、ひいては太子党的体質というべきものへ向けられているのではないかと考えられる。現指導部と太子党との距離感と冷めた関係が表面化したといえるかも知れない。



5.附記:参考

  香港回帰―アジア新世紀の命運 (中公新書 (1363)) [新書] 中嶋 嶺雄
  
  上海特電―アジア新世紀を読む人脈と金脈 (小学館文庫) 森田 靖郎

  華僑は中国をどう変えるか―未来の「資本主義」大国の行方を探る [ハードカバー] 游 仲勲









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