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減速する中国の外交力と周辺地域動向(3)

(続き)

2.1.1 エネルギー資源確保

  すでに日本でも浸透しつつあるのが、この観点で中国とミャンマーを捉えた際の骨子となる、パイプラインの存在だ。先に紹介した通り、2010年6月にミャンマーは、「中国帝国主義の最初の犠牲者」とまで呼ばれていた。そのなかで特に注目されていたのはミャンマー天然ガスであり、アフリカ北部と中東から中国へ輸入される石油である〔22〕
  中国は経済発展のために、その人口と相まって莫大な量の天然資源を必要とする。イデオロギーや覇権主義とは別の次元で、自らが食い散らかしていく資源や市場が必要なのだ。例外としては台湾が挙げられるものの、その根本は中華民族主義に基づく失地恢復のナショナリズムから来るものであり、こちらもまたイデオロギーとは異なる分脈である。大人口を擁する国家として、人民の生活水準の維持目的から、エネルギー、金属、戦略鉱物獲得の必要性を有しているのである。それは中国国内の民族問題であっても同様だ。東トルキスタン地方[新疆維吾爾自治区]に於いては、石油、ガスを確保するために、チベット[西藏自治区]に於いては銅、鉄鉱石などを確保するために〔23〕
  この流れの中なかで、ミャンマーのチャウピューを起点として立案されたのがパイプライン計画だ。この完成により、インド洋の東部に位置する港から内陸経由で、雲南の昆明までの石油パイプラインを敷くというもので、中東からの石油の80%を運ぶと見込まれていた〔22〕
  さらに資源目的で中国が目を付けたのが、イラワジ川の豊かな水力を利用した発電計画である。ミャンマーでは、水力発電所が約40カ所以上計画されており〔24〕、そのほとんどが水力発電に適した、インドシナ半島内陸の国境近くに位置している。中国企業はここに食い込み、技術支援や開発援助の代わりに電力を得る計画を立てた。事実、これらのプロジェクトのうち約8割が、事業母体を中国企業としている。また、ミャンマー企業が事業母体となっているプロジェクトであっても、発電機や建設資材は殆どが中国からの輸入を見込まれていた〔25〕。そのなかでも最大の目玉となるプロジェクトは、ミャンマー政府と中国国営の中国電力投資公司(CPIC)などが共同で建設を進めているミッソンダムの建設計画である。

  
  ▲ミッソンダムの位置

2.1.2 インド洋へのアクセスという側面

  これまでも触れてきたが、雲南~ミャンマー間には上記パイプライン以外にも、様々なインフラ計画が存在する。その最大の理由は、中東・アフリカへの資源獲得ルートの確保のみならず、中国が潜在的な脅威とみなすインドへの対抗軸という側面があるとかんがえられる。「1枚の世界の地図を広げ、中国からインド洋への最短ルートを探せば、視線は最後に南西で辺境の雲南省にロックされるであろう」〔26〕という考えのもと、インド洋へのアクセスという文脈でも中国の雲南省では、様々な計画を始動された。
  2010年5月、雲南省の政治協商会議は昆明で雲南の企業家とフォーラムを開催した。そこでは雲南省の各界における知識人や企業家が一堂に会し、雲南省を「西南方向への“橋頭堡”とならしめる」ことを掲げた「“橋頭堡”戦略」の貫徹を訴えた〔27〕。この「“橋頭堡”戦略」は、2009年7月に胡錦涛国家主席(当時)が雲南省視察時に「雲南を我が国の西へ南の開放的な重要たる橋頭堡とならしめる」と発言したことから始まる開発戦略である。
  この戦略下で進むインド洋へのアクセス整備を代表する計画が、「雲南国際鉄道」計画だ。上記のフォーラムでは省委員会副書記(当時)の李紀恒が「橋頭堡の建設は国家戦略に符合する」と発言。昆明鉄道局副局長(当時)の王耕捷はそれを受け、

  鉄道建設を強化すべき。
  雲南国際鉄道・東線(中国~ベトナム)は、昆明―玉溪―蒙自―河口のルート。
  雲南国際鉄道・西線(中国~ミャンマー)は、昆明―大理―瑞麗―皎漂のルート。
  雲南国際鉄道の東線・西線は、すでに全面的に工事を開始している。

と発言していた。
  そしてこの鉄道については、フォーラム翌日の昆明現地紙『生活新報』が「建昆明至皎漂鐡路是“橋頭堡”建設突破口」と題して意義を強調し〔28〕

  昆明から皎漂へ至る鉄道の建設 これは“橋頭堡”建設の突破口である。
  南西への“橋頭堡”戦略の実施で肝心な点は、突破口をよく選ぶことにある。
  昆明から皎漂への鉄道建設を以て、西南への交通網を貫通させる

旨の内容が報じられた。この記事で「“橋頭堡”建設の突破口」とまで強調される鉄道計画の目的地「皎漂(jiaopiao)」こそ、石油パイプライン計画の始点・チャウピューなのである。

2.1.3 安全保障

  上記2点より、ミャンマーは安全保障の面から見ても非常に重要な国家となった。ミャンマーはそもそも、インドシナ半島西部に位置し、インド、バングラデシュ、ラオス、タイにも隣接している。海岸線は2000キロ近い長さを持つうえ〔29〕、欧州・中東~アジアの物流ルートを鑑みれば、インド洋を貨物船などが航行する際に欠かせない要衝なのである。中国にとってミャンマーは、陸地を通ってインド洋へ直接出ることのできる唯一の国なのだ〔26〕
  海洋国家を目指し、狡猾な戦略を立てる中国がそれを見逃すはずはない。習近平体制下、2013年7月31日に開催した政治局集団会議では、海洋強国戦略について議論が重ねられ、勉強会講師として、国家海洋局海洋発展戦略研究所の所長である高之国が講義。平和発展を堅持する一方で、正当な権益の放棄はありえないと結論が下された。また同日には中国人民解放軍において、上将(大将に当たる)への昇進式典を習近平が行うなどしている〔30〕。この事実は翌日の中国共産党機関紙『人民日報』で1面トップを飾った。

  2013年8月1日『人民日報』01面
  ▲2013年8月1日『人民日報』(クリックで大きくなります)

(続く)



※22 Is Burma the first Causality of Chinese Imperialism ?
   (2010年5月27日『Asian Tribune』)
※23 地政学でのチャイナパワー観察
   (2010年4月『Business Times Online』)
※24 中国の対ミャンマー政策:課題と展望
   (政策提言研究,2012年8月20日発行,JETRO)
※25 ミャンマーの電力開発事情
   (OECC会報第67号,2012年12月,一般社団法人海外環境協力センター)
※26 雲南:内陸邊陲成了開放前沿
   (2010年7月6日『中華工商時報』)
※27 雲南各界為“橋頭堡”建言獻策
   (2010年6月1日『春城晚報』)
※28 建昆明至皎漂鐵路 是“橋頭堡”建設突破口
   (2010年6月1日『生活新報』)
※29 ミャンマーの投資環境とリスク
   (2012年8月9日『RISK RADAR』)
※30 習近平在中共中央政治局第八次集体學習時強調
   (2013年8月1日『人民日報』、上記紹介記事)












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