BLOG「獨評立論」

BLOG「獨評立論」です。ブログ名は「獨り評し論を立てる」の意。主にアジアを中心にニュースや体験などから「獨評立論」を行います。

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
  1. --/--/--(--) --:--:--|
  2. スポンサー広告

金正恩への祝電に見る「中国の本音」

1. 中国の影響力拡大戦略

  年が明け、2012年となった。

  このブログでは、長らく中国の東南アジア方向への観察を続けてきた。しかし去年2011年の最後に、朝鮮半島の情勢が日本とは無関係ではなくなってきた。
  言うまでもなく、北朝鮮の最高指導者・金正日の死去による北朝鮮の今後への、周辺国の関心の高まりである。

  今後は朝鮮半島も含めてアジアの情勢を観察していきたい。
  特に、先のブログ記事で指摘した「中国の対北朝鮮外交は対東南アジア外交の踏襲である」という韓国紙・東亜日報に掲載された論考は非常に興味深いものである。

  韓国の東亜日報
  ▲2010年3月17日『東亜日報』(クリックで大きくなります)

  これは筆者の考える中国の周辺国への戦略とも近いものを感じる。

  この論考を参考に、「中国は対外開放政策や交通インフラの整備を通じて、経済や貿易でのプレゼンスを上げ、周辺国への影響力を拡大していく」という仮説をもとに、観察対象の主体である中国関連情勢の解釈を試みたい。



2. 狂乱的な周辺進出の背景

  中国は今後も発展を続けるために、自らが食い散らかしていく資源や市場が必要なので有る。

  中国は今や、かつてのようなイデオロギーか政体を広げようとしての周辺国へのアプローチは取らないであろう。台湾は中華民族主義に基づく失地回復のナショナリズムから来るものであり、その主要因はイデオロギーとは異なる。非常に大きな人口を擁する国家として人民の生活水準の維持目的から、エネルギー、金属、戦略鉱物獲得の必要性を有し、その結果として東南アジアに、そして朝鮮半島に、中央アジアに進出してくると考えるべきである。

  これは中国国内の民族問題であっても同様の傾向が見られる。東トルキスタン地方[新疆維吾爾自治区]に於いては、石油、ガス、銅、鉄鉱石を確保するために、数十年間にわたって中心地域から漢民族を居住させた。チベット[西藏自治区]に於いては銅、鉄鉱石などが豊かである。これこそが、なぜ北京政府が民族運動を抑え込み、そして狂乱的な交通網整備を進め進出するかという理由なのである。

  中央アジアに目を転じれば、モンゴルは、世界の最も低い人口密度を有する国家であり、人口的にも産業的にも中国に脅かされているという事が出来る。
  ロシア極東では、天然ガス、油、材木、ダイヤモンド、および金が存在する。勘違いしてはならないが、中国が軍隊で攻めてくるという言説に与するつもりはない。中国の軍隊が侵入するか、併合するかという恐怖ではない。問題は、その領域の中国人の人口や、中国系企業の現地産業コントロールが着実に増加しているということなのである。

  そしてその象徴が、このブログで観察を続けてきた中国の南東方向、東南アジアなのである。



3. 周辺国の中で際立つ北朝鮮の特異性

  中央アジア(モンゴル)、ロシア極東、東南アジアは中国の影響が非常に強くなっている地域である。しかし、それらは国際社会から認知されているまっとうな独立国家であり、政治上の境界線:国境は変化することはないであろう(領土紛争は別であるが)。

  しかし、朝鮮半島の状況は異なっているのである。

  中国は朝鮮半島北部の領域をに対し、ゆるやかに経済的接収を行なうべくアプローチを続けてきた。実際には、これを歓迎しない国はないであろう。

  北朝鮮が特異な鎖国的とも言える軍事国家であって良いとはどの国も思わない。かといって、どの国家もそこに眠る資源などには関心を示しつつ、政治的に積極的なアプローチは行いたくないというのが本音であるのだから。



4. 金正恩への祝電に見る「中国の本音」

4.1 新年最初の人民日報

  本ブログの先の記事「雑感:金正日死去!翌日の人民日報」で述べたとおり、北朝鮮と中国は今も依然として強固な同盟関係ではあるものの、路線的には全くの差異を内包しているのである。

  そして、中国は対外開放政策や交通インフラの整備を通じて、経済や貿易でのプレゼンスを上げ、周辺国への影響力を拡大している現状がある。

  それを象徴する記事が、新年最初の人民日報に掲載された記事「胡锦涛致电祝贺金正恩担任朝鲜人民军最高司令官」(=胡錦涛は金正恩が朝鮮人民軍最高司令官を担うことに対し祝電を送った)であろう。このニュースは中国の国営テレビ局「中国中央電視台(CCTV)」のニュース専門チャンネル[中国中央电视台新闻频道]でも報道された。

  

  また、以下に当日の人民日報の画像を示すが、この記事は二つのニュースに挟まれてレイアウトされているのも象徴的である。
  そのニュースとは、①「中俄两国元首互致新年贺电」②「《求是》杂志发表胡锦涛总书记重要文章 坚定不移走中国特色社会主义文化发展道路 努力建设社会主义文化强国」である。

  3.jpg
  ▲2012年1月1日『人民日報』(クリックで大きくなります)
 
  これらを一つ一つ見ていくことにしよう。

4.2 胡錦涛が送った祝電

  胡錦濤が送った祝電に関する報道部分を全文引用する。太字の部分に注目されたい。

  中华人民共和国中央军事委员会主席胡锦涛31日致电祝贺金正恩担任朝鲜人民军最高司令官。胡锦涛在贺电中表示,中朝两国人民和军队之间有着深厚的传统友谊。相信在新的历史条件下,中朝传统友好合作关系一定会不断得到巩固和加强。

  中華人民共和国中央軍事委員会主席である胡錦涛は、(2011年12月)31日に金正恩が朝鮮人民軍最高司令官を担うことに対し祝電を送った。胡錦涛は祝電の中で以下のように表明している。中朝両国の人民と軍隊は深い伝統的な友情を持つ。中朝の伝統の友好協力関係は、新しい歴史的条件の下で、きっと絶えず強化されると信じている。



4.3 祝電報道を挟むようにレイアウトされた記事内容

  2012年1月1日の人民日報1面では、上述のように、胡錦涛が金正恩に祝電を送ったという記事を挟むように二つの記事がレイアウトされている。その二つの記事についても詳しくチェックする。

  前者については、以下のような内容のものである。
  中ロ両国の首脳が互いに新年の祝電を送りあった。旧年中は中ロ関係は急速に発展し、経済貿易関係も非常に進み、戦略的互恵関係としてもますます緊密になってきた。そして、2012年は一層の発展と両国人民の幸福を目指し、また国際的にも安定した政策をおこなっていく。
  後者については、以下のような内容のものである。
  中国共産党中央総書記、国家主席、中央軍事委員会主席の胡錦涛は、中国共産党中央の理論政治誌『求是』に重要文章「中国の特色ある社会主義の発展の道を確固不動とし、社会主義文化強国の建設に努力しよう」を発表した。この内容は、中国の特色ある社会主義の文化の建設は、全体的なグランドデザイン[总体布局]の最も重要な部分であり、適度に豊かな社会の構築の文化的な繁栄と発展は重要な目標であるという内容のものである。

  後者に於いて注意すべきは、この中で触れられている「中国の特色ある社会主義」との言葉である。これは2007年の中国共産党第十七次全国代表大会(十七大)で定められた、「中国共産党指導下で、国情に基づき、経済的建設を中心とし、四つの基本的原則(=社会主義の道、プロレタリアート独裁、中国共産党の指導、マルクス・レーニン主義と毛沢東思想)や改革開放路線を堅持し、社会主義市場経済のもとに現代的な国家を目指して努力する」という、中国独特の社会主義のことである。

  この二つのニュースが、先に述べた胡錦濤から金正恩への祝電報道を挟む形で、人民日報1面にレイアウトされているのである。

4.4 中国の本音

  以上より中国の本音を推し量ることができよう。

  祝電の中で「新しい歴史的条件の下で、きっと絶えず強化される」とあるのは、裏を返せば、「古い考えにこだわっていてはならない」「新しい歴史的な路線に転換するべきだ」とも取れる。

  そして、その記事を挟む二つの記事では、共産主義を放棄した北朝鮮を囲む二つの国(ロシア〔=旧ソ連〕と中国)が経済的に潤い関係も上手くいっているということを示唆し、改革開放路線を含む現在の中国の在り方こそがこれからの中国の基本路線であると高らかにうたっているのである。とくに後者の記事では、記事中の胡錦濤の肩書の言及を見てもわかるとおり、中国のこの政治路線は「党、国、軍」に於いて共通のものであると示している。

  2012年元日の人民日報1面は、中国にとってプラスになるような路線へ転換せよという、中国の北朝鮮への或る種の圧力のようなものを感じるものであった。



5. 余談

  余談である。

  中越戦争の例があるため、中国が周辺国の政策によって軍事的に介入することは可能性としては当然ゼロではない。況やアメリカが黙認するであろう国家に於いておやである(当時、アジアは日米中vsロシア・ベトナムという構図に傾き、クメール・ルージュ政権はその結果として長らえた)。

  中国の国防省は一貫して、中国軍の北朝鮮駐屯を公式に否認している。
  しかしノンフィクションライターの安田峰俊氏は、「でも党の軍隊だからいいもんね、とか、いざという時には一休さんみたいな理屈が使える」という視点の面白い指摘をしている。

  そこで改めて気になって上述の記事をチェックしてみれば、胡錦濤から金正恩への祝電報道に於ける胡錦濤の肩書は「中華人民共和国中央軍事委員会主席」なのである。つまり「中国共産党中央軍事委員会」ではないのである。

  中国人民解放軍を動かす「中国共産党中央軍事委員会」は、「中朝の伝統の友好協力関係は、新しい歴史的条件の下で、きっと絶えず強化されると信じている」という立場すら明確には表明していない。



【参考】

※1  雑感:金正日死去!翌日の人民日報
    (2011年12月25日 本ブログ過去記事)
※2  地政学でのチャイナパワー観察
    (2010年4月『Business Times Online』)
※3  胡锦涛致电祝贺金正恩担任朝鲜人民军最高司令官
    (2012年1月1日『人民日报』)
※4  胡锦涛致电祝贺金正恩担任朝鲜人民军最高司令官
    (2011年12月31日,中国网络电视台:http://www.cntv.cn/
※5  中俄两国元首互致新年贺电
    (2012年1月1日『人民日报』)
※6  《求是》杂志发表胡锦涛总书记重要文章
    (2012年1月1日『人民日报』)
※7  胡锦涛:坚定不移走中国特色社会主义文化发展道路 努力建设社会主义文化强国
    (2012年1月1日『求是』)

  求是2012年1月号
  ▲中国共産党中央の理論政治誌『求是』2012年1月号



















「この記事は好評価」なら… ⇒ 下のバナーをクリック!

人気ブログランキングへにほんブログ村 ニュースブログ 海外ニュースへにほんブログ村 政治ブログ 国際政治・外交へブログ王へ




スポンサーサイト

テーマ:東アジア問題 - ジャンル:政治・経済

  1. 2012/01/04(水) 22:41:49|
  2. 獨評立論-中国
  3. | トラックバック:0
  4. | コメント:0

時計


BLOG「獨評立論」

BLOG「獨評立論」です。ブログ名は「獨り評し論を立てる」の意。筆不精ですが、主にアジアを中心にニュースや体験などから「獨評立論」を行います。

Author:DUPINGLILUN
一人の日本人です。一切の企業、団体、宗教等とは無関係です。/ngóa sī Ji̍p-pún-lâng kì-chiá./yat boon yan/JAPANESE

ブログランキング

ブログランキングに参加しております。良い記事であると御評価下さる方は、ぜひバナーのクリックを御願いします。

人気ブログランキングへ にほんブログ村 政治ブログ 国際政治・外交へ
ブログ王へ

最新記事

月別アーカイブ

カテゴリ

獨評立論-未分類 (0)
獨評立論-中国 (23)
獨評立論-日本 (0)
獨評立論-朝鮮半島 (3)
獨評立論-東南アジア (7)
獨評立論-媒体 (2)
獨評立論-その他 (1)
シリーズ記事「謀略鐵路」 (10)
シリーズ記事「減速する中国の外交力と周辺地域動向」(未完) (16)
獨評立論-詩詞 (2)

過去記事全リスト

検索フォーム

最新コメント

リンク

このブログをリンクに追加する

RSSリンクの表示

書棚

メールフォーム

名前:
メール:
件名:
本文:

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。