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尖閣雑感~「尖閣」「抗日」「台湾統一工作」の三位一体~

  先頃の日本の沖縄県石垣市への中国の領海侵犯事件に関して、マスコミやインターネットの世論をはじめとして様々な意見が飛び交っているが、事実上その背後関係を詳細に論じたものは現在も皆無である。

  筆者は中国の南方進出に対して、現地視察も含め精力的にウォッチングをしているのだが、今回の件に於いての本質的な内実と言えるものはいったい何であるのか。それは、結論から言うならば「尖閣」「抗日」「台湾統一工作」の三位一体といえる構造の表面化である。

  尖閣諸島の領有権を巡って今回は日本でも様々な世論の高まりがみられたが、それは中国に於いても同様であり、また、同時に香港及び台湾に於いてもその動きが見られた。
  ここにあるのは言うまでもなく「台湾統一工作」のための要素として中国が「尖閣」のカードを切り、その根底にあるのが「抗日」という要素であるということが出来よう。

  筆者は中国の南方進出とシーレーン掌握の動きが活発化する流れの中で先頃マレーシアのマラッカ海峡周辺を視察に行ってきた。その中で「台湾統一工作」の最近の活発化を端的に示すエピソードが見られたので紹介したい。
  それは華僑の多いマレーシアのペナン、此処に於ける中国にとっても台湾にとっても「国父」として位置付けられている孫文のペナン滞在時の拠点を訪れた際のことである。
  その孫文の「ペナンベース」には、「中国国家主席(当時国家副主席)である胡錦濤先生が参観」として、胡が現地をを参観した際の写真が掲げられ、しかもそこには孫文のペナン亡命時を描いた映画『孫文-100年先を見た男-』(原題『夜・明』)のポスターがあった。
  この映画については、台湾総統府の蕭万長副総統が「この映画は国父・孫中山先生が清朝を倒すために、革命思想の宣伝に各地を奔走し、夜明け前の奮闘の様子を描いたもので、中華民国建国100年を迎えるにあたり、皆様とこの映画を観賞するのは格別の意義がある」と述べた」と2010年7月29日の『台湾週報』が報じている。

  筆者が台湾の関係者から頂戴した資料の中では既に台湾はもう陥落の段階に入っていると示唆するかのような「紅色戒厳」の様相が記録されており、故に今回の報道で蕭が「来年は中華民国建国100周年にあたり…(略)…台湾の特色ある中華文化を発揚することを計画している」と述べ、「先人の熱血的な貢献に対する国内外の華人のコンセンサスを凝集すれば、未来の展望が開け、よりよい明日が創造される」と強調し同映画が台湾各地で上映されることに期待を示したことが、台湾統一戦線工作の活発化を端的に示していると確信した。

  そしてその台湾統一戦線工作の一環としての中国の南方進出とシーレーン掌握、この根底にあるのは、上述のような「中華」という世界観の広範な浸透と、その際の鍵としての「抗日」アイデンティティであると言える。
  何故筆者がこれを言うかと言えば、今回の尖閣諸島の問題に先だって問題となった南沙諸島の件におけるアメリカとの絡み、そして尖閣諸島での一件の後に中国とロシアが共同で発表した「北方領土はロシアの、尖閣は中国の」という声明である。
  前者について詳細に言うならば、ASEANはこの海域の協議に米国の介入(多国間協議)を許したため、結果的に米中二国で決着が付けばそのまま無条件に反映されかねないという状況が出現したと言える。
  そして、後者について詳細に論じるならば、中ソ論争以降、中国はソビエト修正主義に対抗するために北方領土に於ける日本の主権を支持、防衛力強化すら容認していた原則を公式に否定したという事実である。
  当時はソビエトに対抗するために「日米中三国枢軸」とまで形容された関係が中ソ和解まで存続していたが、それが今や中露の戦略的互恵関係のもとで日本の封じ込めに入ったことを表し、そしてその一方で米中のルートが活きているという事実がある。

  そこで彼らを繋ぐ鍵になるのはなにか。それこそが「抗日」である。

  中国は米国に対し「伝統的な中美関係」というロジックで友好をアプローチするのが常だが、此処にあるのは「伝統」すなわち共に日本軍国主義と戦ったというロジックである。そしてその歴史的なロジックが通用するのが今の日本ゆえに、今回も中露で共同声明が出された。そこにあるのは言うまでもなく民主党閣僚の歴史認識であり、それが今回の尖閣諸島の件にも直結しているのである。

  今回の件で思い出されるのは2009年に中国の雑誌『瞭望』が指摘した「中国の海軍戦略が近海防御から遠海防御にシフトした」という記事である。此処にあるのは、2007年中共第17会全代大(当時非公開)で胡錦濤が指示したように「近海総合作戦能力を向上させると共に、徐々に遠海防衛型に転換し、遠海機動作戦能力を向上させ、領海と海洋権益を保衛し、エネルギー資源の戦略ルートの安全を保護」というもので、事実先頃の『人民日報』には、アデン湾での活動が掲載されている。曰く「和平方舟」(平和の方舟)と。

  つまり、南シナ海の湾統一戦線工作の一環としての中国の南方進出とシーレーン掌握、そのためのエネルギー資源ルートの確保としての海軍力の強化が中国に政治力学として存在し、そしてそのために中国南方の華僑を有する東南アジアに対し「中華」という世界観の広範な浸透と、その際の鍵としての「抗日」アイデンティティの強化を中国は図っているのである。

  そしてそれを反映する形でロシア、アメリカをも巻き込み、尖閣諸島を中心とする南シナ海における日本のプレゼンス低下を今回大々的に世界に誇示したというのが事件の内幕である。
  そして先の在日中国人向けの新聞が「南海問題:中国警告美国」として中国のアメリカへの南シナ海への警告を報道していた南シナ海の案件は、此処に於いて米国の介入(多国間協議)と言う形で米中二国で決着を付けそれを反映させるという大国の論理を出現させたのである、

  雑誌『爭鳴』1984年10月号は「中共の関与下では、『港人治港』は必ずや『左人治港』『党人治港』『京人治港』となる」と述べ、北京政府の影響力強化を案じていたが、事実今回は香港でも200人の香港の支持団体によるデモなどが起きており、台湾も特に外省人を中心に同様の事態が出現し、香港も台湾も尖閣領有に関して動いた。そこにあるのは、「尖閣」カードを「中華統一」の良き材料として利用した中国の思惑が透けて見える。

  これこそが今回の中国の尖閣諸島に対する領海侵犯の背後関係であり、日本の世論のみが単純な中国批判に終始し後手に回っているという状況は、何というお寒い状況であろうか。

 筆者は中国の南方進出をウォッチングしマラッカ海峡を視察した身として、今回の件の背後で今も着々と進行している中国雲南省からミャンマーへの石油パイプライン建設(先頃9月に雲南省内の部分が着工された)が進んでいる状況は、日本経済の要であるシーレーンを抑える中国の「真珠の首飾り」戦略とリンクする非常に日本経済の先行きを憂えるものであるという結論を此処に述べておきたい。


孫文のペナン亡命時を描いた映画
『孫文-100年先を見た男-』(原題『夜・明』)




胡錦濤の参観と映画『孫文-100年先を見た男-』(原題『夜・明』)のポスター
孫文の「ペナンベース」にて筆者撮影


映画『孫文-100年先を見た男-』(原題『夜・明』)





  来年は中華民国建国100周年にあたり…(略)…台湾の特色ある中華文化を発揚することを計画している。
  先人の熱血的な貢献に対する国内外の華人のコンセンサスを凝集すれば、未来の展望が開け、よりよい明日が創造される。

台湾総統府、蕭万長副総統の発言
『台湾週報』2010年7月29日



  中国の海軍戦略が近海防御から遠海防御にシフトした。

『瞭望』2009年



  近海総合作戦能力を向上させると共に、徐々に遠海防衛型に転換し、遠海機動作戦能力を向上させ、領海と海洋権益を保衛し、エネルギー資源の戦略ルートの安全を保護する。

2007年中共第17会全代大での胡錦濤発言(当時非公開)



  中共の関与下では、『港人治港』は必ずや『左人治港』『党人治港』『京人治港』となる。

雑誌『爭鳴』1984年10月号







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