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「謀略鉄路」(9)

(続き)



  以上、この「謀略鉄路」のタイトルで数回に分けて書いている中国の動きは、何も雲南省から中国南方にかけてのみに留まるものではない。雲南省での動きに連動するかの如く積極的な南方進出を隠さない隣接地域として、先に書いた広西チワン族自治区は好例である。しかし留意すべきは、この記事では南方進出をメインに書いたが、実際には現在中国が多方面に行う外交領域での主要な潮流なのである。

  北東アジアでは、北朝鮮に、ロシアに、モンゴルに。
  中央アジアではウズベク、カザフ、キルギス、タジク、トルクメンに。

  そもそも広い意味で北東アジアおよび中央アジアである、満州やウイグル(東トルキスタンと考えれば、まさに中央アジアの地域の一である)そしてチベットに対しても、中国は建国直後より道路や鉄道などの交通運輸手段の確保という段階を踏んで「人民平和解放」を実行している。

  数日前の人民日報海外版1面には「天山架飛橋」と題して新疆ウイグル自治区の山岳地帯に吊り橋の架橋工事を行う写真が掲載されたばかりである。賽果高速公路。賽はセリム湖の賽。果は果子溝の果。全長56.2キロの国家重点建設工程であり工程投資概算は23.9億元。中国は新疆ウイグル自治区に、向こう5年内に8万キロの道路を建設するつもりであるという(『チャイナネット』より「新疆、向こう5年内に8万キロの道路を」)。

  本来は東トルキスタン地域を指す「西域」の語は、今や西トルキスタン、すなわち中央アジア諸国から、西アジアをも指す概念として使われてもいるのだ。

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▲某日の人民日報海外版1面より「天山架飛橋」(詳細は上述)







  三度(みたび)繰り返して書くが、陸路の交通網を整備して浸透を深め影響力を確保・拡大していくのは、ウイグル・チベット以降も連綿と続く中国の基本的な戦略なのである。それは人海戦術に頼る陸軍主体の中国の体質ゆえであったかもしれないが、少なくとも戦略論的に基本中の基本として、今日でもいまだその重要性は失われていない。



  まさに「新幹線外交」的な発展であると言えるだろうこの中国の動きについて、筆者の知人は「共産主義国の陰謀」「これこそが共産中国の恐怖だ」など、あたかも共産主義イデオロギーの浸透であるかのように言い、さも冷戦時代であるかのような認識を示している。しかし果たしてそうであろうか。

  筆者はそうは思えない。勿論、中国が影響力の浸透を図っており経済的侵略を進めていることは事実であるが、それは共産主義という冷戦期の遺物たるイデオロギーによってもたらされているものであろうか。

  先ごろ4月、『Business Times Online』「地政学でのチャイナパワー観察」と題された記事が掲載された。この記事は、中国の国外へ向かっての非常に積極的な進出に対し、明快にこの問いに「NO」を突き付けている。曰く、「中国はイデオロギーか政体を広げようとしてはアプローチを取らない。大きい人口の生活水準の維持目的で、エネルギー、金属、戦略鉱物獲得の必要性から」であると喝破している。

  以下に「地政学でのチャイナパワー観察」の要旨を引用するが、この中では筆者が先に「基本的な戦略」としての原点として挙げたウイグル・チベットについても同様であるとの認識が示されており、さらに北東アジア、中央アジアに対する中国の姿勢についても言及したものである。

  中国は今日、1世紀前の合衆国同様に攻撃的である。しかしそれは完全に異なる理由からである。中国はイデオロギーか政体を広げようとしてはアプローチを取らない。大きい人口の生活水準の維持目的で、エネルギー、金属、戦略鉱物獲得の必要性からである。
  中国の中では、新疆とチベットが中国に抵抗した主要領域。新疆すなわち石油、ガス、銅、鉄鉱石を確保するため、北京は数十年間中心地域から漢民族を居住させた。
  領土の大部分が山岳地域のチベットは銅、鉄鉱石などが豊か。これこそが、なぜ北京がなぜ恐怖を以てチベット自治獲得運動を見るか、そして狂乱的に道路を敷設し鉄道で進むか、という理由である。
  中国の北境はモンゴル。モンゴルは、世界の最も低い人口密度の1つを有する。現在、隣国・中国の文明に人口に脅かされている。
  ロシア極東…天然ガス、油、材木、ダイヤモンド、および金の貯蓄。モンゴルのように中国の軍隊が侵入するか、併合するかという恐怖ではない。問題はその領域の北京人の人口の、法人のコントロールが着実に増加しているということ。
  中国の影響は南東で広まっている。ベトナム、ラオス、タイ、およびミャンマーと中国を切り離している地理的な障害が僅かしかない。中国は南の隣人との有益な関係を育み続けている。
  低値農産物をASEANから買う一方、高値の中国の製造加工品を販売する市場としてASEANを使用。


  そのうえで記事は今後の問題についても考えられ得るシナリオを描いている。

  中央アジア(モンゴル)、ロシア極東、東南アジアは中国の影響の自然な地域。しかし、それらは政治上の境界が変化しそうにない。
  朝鮮半島の状況は異なっている。
  もちろん誰も、中国が朝鮮半島の地域を付加するとは予想しない。しかし金正日のスターリン主義政権を支持しつつ、彼の治世の間にも半島へのプランがある。
  結局、現在北京はその領域のゆるやかな経済接収のために好都合な政治基盤を築き上げることができるよう、中国にいる何千人もの脱北者をそこに送還したがっている。

  北京は、軍事的にではなく、経済的に社会的に台湾をカバーする準備をしている。
  これがどう生じるかは、その領域の大国外交の未来に重要。
  米国が台湾を北京に捨てると、太平洋の日本、韓国、フィリピン、オーストラリア、および他の米同盟国はワシントンを疑い始める。
  それらの国が、その結果、本当に半球状の割合の「大中国」の出現を許容するよう奨励するかもしれない。
  これは「時代のシグナル」的なドラマであるかもしれない。



  そして筆者はここで述べられている「大中国」についても指摘しておきたい。

  「大中国」とは「大中華経済圏」とでも言うべきもので、香港や台湾の一部の学者が提起した大経済圏構想であるとされる。世界にとりわけ南方に多数の華僑を有する中国にとって、構築は容易であり魅力的であることは間違いない。1993年に世界銀行は報告書の中で、中国大陸・香港・台湾を「中華経済地域」と名付け,その経済力を評価した上で世界経済の将来に与える影響について論じている。「両岸四地」(台湾海峡を挟んでの中国・台湾、そして香港およびマカオ)は言うに及ばず、東南アジアにおいては、シンガポールなどは人口の4分の3が華人によって占められている。そしてタイのタクシン元首相に見られるように華人資本は経済活動に於いて無視できない影響力を持っているがゆえに、彼らの経済ネットワークが形成されることによって、中国との物流も活性化する中で中国の経済大国化が促進されるという構図がある。

  ロシア紙・イートギは2008年10月の段階で「大中国」と題したコラムを載せており、その記事の中で「経済一体化による大中華圏が中国本土・香港・マカオ・台湾にとどまるものではなく、東南アジアにも及ぶ」という指摘を発表、同月16にそれは海外の各メディアでも配信された。そしてその直前、前日の15日に中国新聞社の取材にASEANビジネス専門家が「ASEANが第三のビジネスパートナーになる」と発言しているのである。つまりインド洋方向の経済の新たなる枠組みを求める動きがこの時点で表面化していたのである。

  この動きの背景にあるのは「共産主義の陰謀」などという時代錯誤な言葉ではない。「グローバル化」と「ボーダーレス」の中での「ビッグビジネス」的な利益追求でなく何であろうか。

  そして「北京は、軍事的にではなく、経済的に社会的に台湾をカバーする準備をしている」と指摘されている「台湾のカバー」こそが、まさに「真珠の首飾り戦略」をなぞるようにしてのシーレーンの掌握であり、「“橋頭堡”戦略」による東南アジアへの影響力浸透であり、そして「自由と繁栄の弧」をそのまま中国がそっくり頂いての「東アジア共同体」の名における「大中華経済圏」ではないか。

  この件については機会あらば、この「謀略鉄路」の記事が終了し次第、過去の記事を引用して再度掲載したい。

  ここでは最新のニュースの一として、台北で15万人が参加する大規模なデモがあったということを述べておくに留める。李登輝元総統も参加したこのデモは、「一中市場(一つの中国市場)」に反対し、台中両岸経済協力枠組協定の可否を問う国民投票実施を求めるものであったという(台湾の報道より、『TWIMI 獨立媒體 』より「反對一中市場 人民公投做主」626大遊行(李登輝致詞)、『公視中晝新聞』より「營反ECFA遊行 李登輝蔡英文蘇貞昌陳菊參加」)。



(続く)








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  1. 2010/06/28(月) 19:06:31|
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